ーー「…というわけなんだ…」
「…」
稀琉の話が終わったが、誰も口を開かなかった。
長い沈黙が続く。
その中で先に口を開いたのはロスだった。
「なるほどねー…。なんで、稀琉がこの世界にきたかずっと疑問だったけど…。そーゆー訳だったわけだ」
ロスの言葉にコクりと頷く。
「これは…オレが犯してしまった…罪。絶対に…拭うことのできない…大き過ぎる大罪」
ギュッと自身を抱き締めるように服をつかむ稀琉。
とても辛そうにしている稀琉を見ていられなかったのか麗弥は口を開いた。
「そんなことあらへんよ、稀琉!そんなん、稀琉は何も悪くあらへんやないか!」
その麗弥の言葉を聞いた稀琉は首を左右に降った。
「違…うよ、麗弥…オレが悪いんだ…オレが…!」
「!」
取り乱したかのように首を左右に降り続ける稀琉。
その様子に最初に反応したのはクロムだった。
「違うやん!それは、兄貴が言ってるだけや!」
「違うよ、麗弥!オレが…全て悪いんだ!兄さんは…悪くない…兄さんは…!」
両手で稀琉は頭を押さえた。先程よりも辛そうに目を強く瞑って。
「…チッ」
クロムは面倒くさそうに舌打ちをすると「…おい、ちょっと来い」と麗弥の服の襟を掴むと引っ張っていった。
「えっ!?ちょっ…クロム!?」
麗弥は訳もわからずに引っ張られていく。
チラリとクロムはロスを見た。
クロムの表情から何かを悟ったロスは黙って頷いた。
それを見たクロムはそのまま、何がなんだか分からない麗弥を無理矢理連れて部屋の外に出た。
部屋に残されたロスは稀琉を見る。
稀琉は、パニックを起こしているのかしきりに「オレが悪いだ…オレが…!」と呟いていた。
ーー一方、部屋の外に出た二人は…
クロムが乱暴に襟を持って麗弥を投げる形で離し、腕を組んで壁に寄りかかった。
そんなクロムに麗弥はなんで連れ出されたのか理由を問う。
「なんで、出したん?クロム!俺、間違ってることなんて…」
そんな麗弥にクロムは溜め息をつきながら答える。
「馬鹿か。てめぇは」
「なんで…」
「あのな…てめぇは気遣ったかもしれんが、そんなの今のあいつにとってキツイことを言われてるもんなんだぞ」
「えっ…?」
麗弥は、目を丸くしてクロムを見た。
「あれだけ…自分を追い詰めてる奴だ。それも何年も。そんな奴に“悪くない”って言うことは…逆に追い詰めるだけだ。てめぇだって見に覚えがあるだろう?」
その言葉に麗弥はハッとする。1か月前に自分が醜鬼に少しでも乗っ取られ支配されて姉や醜鬼の男を傷つけたことを思い出したからだ。
そうや…あの時…俺は自分の弱さを…責めた。悪くないとの姉の言葉に…そんなことがないと思ったんや…。
今の稀琉は…そんな状態なんだ…。
黙ってクロムの顔を見るとクロムは言葉を続ける。
「いつもの稀琉なら…受け流せるだろう。そのくらい心の余裕があるだろうからな。だが…今の稀琉には無理だ。少しでも稀琉に気遣いがしたいなら今は余計なことを言うな。黙って…頷くだけにしろ」
紅く冷たい目が麗弥を捉えた。
そして「つーか、俺にも分かること言わせんじゃねーよ」と言った。
「…そう、だよな…俺ーー「黙れ」」
麗弥の言葉に被せるようにクロムはボソリと呟いた。
「えー!!なんでなん!?」
言い返す麗弥にまた溜め息をつきながら答える。
「稀琉があの状態なのにてめぇまでうじうじすんじゃねぇよ。面倒くせぇ。つーか、あいつをこれ以上うじうじさせるようなこと言ったら…殺すからな。ただでさえうざってぇのに。…てめぇのことで頭一杯になってるのか知らんが…稀琉を少しでも元気付けたいならとにかく今はそれに触れるな。…いいか?」
また凛とした目が麗弥を捉えた。その目には真剣さが見えた。
そんなクロムに麗弥は黙って頷いた。
「そう…やな。悪かった、クロム。…ありがと」
そういう麗弥に対し、クロムは「…別に。これ以上うじうじされんのが癪だっただけだ」と言った。
ーーその頃、部屋の中では…
さーて…どうすっかなぁ…。
ロスは目の前でパニックになってる稀琉を見ながら思った。
まぁ、何しなきゃいけねぇのかはわかってるけど。
パニックになってる稀琉の肩に手をポンと置いた。
ビクッ
稀琉がビクリと体を震わせた。
「落ち着いて、稀琉。大丈夫だから」
そう優しく言うロスをゆっくりと見ると優しく微笑んでいた。
ドクン ドクンと激しく脈打つ心臓や不安でいっぱいだった心の嫌な気持ちがスゥと消えていった。
なん…だろ。この間も…そうだったけど…ロスにそう言われて肩に手を置かれると…この不安な気持ちが消えていく。
不思議と…落ち着くんだよな…。
まだ潤んでいる目をロスに向ける。
変わらず優しい微笑みを浮かばせていた。
「良かった。落ち着いた?」
そうロスが聞くと稀琉はコクりと頷いた。
「麗弥、悪気がないと思う…てか、稀琉の為に言ったことだから勘弁してやってな」
「そう…だよね…。オレ…自分のことでいっぱいで…麗弥には悪いこと…しちゃったな…」
シュンとする稀琉にロスはまた言葉をかける。
「いーんだよ今日は。そう思うなら後で帰ってきた麗弥に普通にしてやってくれ」
「…うん」
僅かながら微笑む稀琉に優しく笑いかける。
俺にとって…他の生き物の負の感情は美味しいエネルギーだからな。この間の体のことの時も今も…中々美味しい餌だった。
ロスに肩を触られると負の感情が消えるのはロスが吸い取っているからだ。悪魔には生き物の負のエネルギーを吸い取る能力がある。本来なら逆にもっと貶めてから吸い取るんだけど…これ以上クロムがイライラすると面倒だからなー。しかしあいつも甘くなったな。ここに長く居過ぎたせいかね?まあ大方は話進まなくなんのが面倒になったんだろうけど。…あいつに限って目的は忘れてる訳じゃねぇだろうけど、少し突いてやんねぇとな。後でからかってやろっと。
あくまで稀琉の為の行動ではない。でも…この顔は俺を信用してる顔だ。ちょーっと優しくしてやるとすぐに簡単に騙されて信頼してくる。鬼の力があると言うから騙されないのではないかと思ったが…そんな事なかったな。まるで無惨に殺された輝太の様で愛しいとさえ思える。ロスの言う愛しいは下に見ている証拠であった。
優しく微笑む笑顔の裏でそんな事を思っているとガチャリと扉が開き、外から二人が帰ってきた。
「…」
稀琉の話が終わったが、誰も口を開かなかった。
長い沈黙が続く。
その中で先に口を開いたのはロスだった。
「なるほどねー…。なんで、稀琉がこの世界にきたかずっと疑問だったけど…。そーゆー訳だったわけだ」
ロスの言葉にコクりと頷く。
「これは…オレが犯してしまった…罪。絶対に…拭うことのできない…大き過ぎる大罪」
ギュッと自身を抱き締めるように服をつかむ稀琉。
とても辛そうにしている稀琉を見ていられなかったのか麗弥は口を開いた。
「そんなことあらへんよ、稀琉!そんなん、稀琉は何も悪くあらへんやないか!」
その麗弥の言葉を聞いた稀琉は首を左右に降った。
「違…うよ、麗弥…オレが悪いんだ…オレが…!」
「!」
取り乱したかのように首を左右に降り続ける稀琉。
その様子に最初に反応したのはクロムだった。
「違うやん!それは、兄貴が言ってるだけや!」
「違うよ、麗弥!オレが…全て悪いんだ!兄さんは…悪くない…兄さんは…!」
両手で稀琉は頭を押さえた。先程よりも辛そうに目を強く瞑って。
「…チッ」
クロムは面倒くさそうに舌打ちをすると「…おい、ちょっと来い」と麗弥の服の襟を掴むと引っ張っていった。
「えっ!?ちょっ…クロム!?」
麗弥は訳もわからずに引っ張られていく。
チラリとクロムはロスを見た。
クロムの表情から何かを悟ったロスは黙って頷いた。
それを見たクロムはそのまま、何がなんだか分からない麗弥を無理矢理連れて部屋の外に出た。
部屋に残されたロスは稀琉を見る。
稀琉は、パニックを起こしているのかしきりに「オレが悪いだ…オレが…!」と呟いていた。
ーー一方、部屋の外に出た二人は…
クロムが乱暴に襟を持って麗弥を投げる形で離し、腕を組んで壁に寄りかかった。
そんなクロムに麗弥はなんで連れ出されたのか理由を問う。
「なんで、出したん?クロム!俺、間違ってることなんて…」
そんな麗弥にクロムは溜め息をつきながら答える。
「馬鹿か。てめぇは」
「なんで…」
「あのな…てめぇは気遣ったかもしれんが、そんなの今のあいつにとってキツイことを言われてるもんなんだぞ」
「えっ…?」
麗弥は、目を丸くしてクロムを見た。
「あれだけ…自分を追い詰めてる奴だ。それも何年も。そんな奴に“悪くない”って言うことは…逆に追い詰めるだけだ。てめぇだって見に覚えがあるだろう?」
その言葉に麗弥はハッとする。1か月前に自分が醜鬼に少しでも乗っ取られ支配されて姉や醜鬼の男を傷つけたことを思い出したからだ。
そうや…あの時…俺は自分の弱さを…責めた。悪くないとの姉の言葉に…そんなことがないと思ったんや…。
今の稀琉は…そんな状態なんだ…。
黙ってクロムの顔を見るとクロムは言葉を続ける。
「いつもの稀琉なら…受け流せるだろう。そのくらい心の余裕があるだろうからな。だが…今の稀琉には無理だ。少しでも稀琉に気遣いがしたいなら今は余計なことを言うな。黙って…頷くだけにしろ」
紅く冷たい目が麗弥を捉えた。
そして「つーか、俺にも分かること言わせんじゃねーよ」と言った。
「…そう、だよな…俺ーー「黙れ」」
麗弥の言葉に被せるようにクロムはボソリと呟いた。
「えー!!なんでなん!?」
言い返す麗弥にまた溜め息をつきながら答える。
「稀琉があの状態なのにてめぇまでうじうじすんじゃねぇよ。面倒くせぇ。つーか、あいつをこれ以上うじうじさせるようなこと言ったら…殺すからな。ただでさえうざってぇのに。…てめぇのことで頭一杯になってるのか知らんが…稀琉を少しでも元気付けたいならとにかく今はそれに触れるな。…いいか?」
また凛とした目が麗弥を捉えた。その目には真剣さが見えた。
そんなクロムに麗弥は黙って頷いた。
「そう…やな。悪かった、クロム。…ありがと」
そういう麗弥に対し、クロムは「…別に。これ以上うじうじされんのが癪だっただけだ」と言った。
ーーその頃、部屋の中では…
さーて…どうすっかなぁ…。
ロスは目の前でパニックになってる稀琉を見ながら思った。
まぁ、何しなきゃいけねぇのかはわかってるけど。
パニックになってる稀琉の肩に手をポンと置いた。
ビクッ
稀琉がビクリと体を震わせた。
「落ち着いて、稀琉。大丈夫だから」
そう優しく言うロスをゆっくりと見ると優しく微笑んでいた。
ドクン ドクンと激しく脈打つ心臓や不安でいっぱいだった心の嫌な気持ちがスゥと消えていった。
なん…だろ。この間も…そうだったけど…ロスにそう言われて肩に手を置かれると…この不安な気持ちが消えていく。
不思議と…落ち着くんだよな…。
まだ潤んでいる目をロスに向ける。
変わらず優しい微笑みを浮かばせていた。
「良かった。落ち着いた?」
そうロスが聞くと稀琉はコクりと頷いた。
「麗弥、悪気がないと思う…てか、稀琉の為に言ったことだから勘弁してやってな」
「そう…だよね…。オレ…自分のことでいっぱいで…麗弥には悪いこと…しちゃったな…」
シュンとする稀琉にロスはまた言葉をかける。
「いーんだよ今日は。そう思うなら後で帰ってきた麗弥に普通にしてやってくれ」
「…うん」
僅かながら微笑む稀琉に優しく笑いかける。
俺にとって…他の生き物の負の感情は美味しいエネルギーだからな。この間の体のことの時も今も…中々美味しい餌だった。
ロスに肩を触られると負の感情が消えるのはロスが吸い取っているからだ。悪魔には生き物の負のエネルギーを吸い取る能力がある。本来なら逆にもっと貶めてから吸い取るんだけど…これ以上クロムがイライラすると面倒だからなー。しかしあいつも甘くなったな。ここに長く居過ぎたせいかね?まあ大方は話進まなくなんのが面倒になったんだろうけど。…あいつに限って目的は忘れてる訳じゃねぇだろうけど、少し突いてやんねぇとな。後でからかってやろっと。
あくまで稀琉の為の行動ではない。でも…この顔は俺を信用してる顔だ。ちょーっと優しくしてやるとすぐに簡単に騙されて信頼してくる。鬼の力があると言うから騙されないのではないかと思ったが…そんな事なかったな。まるで無惨に殺された輝太の様で愛しいとさえ思える。ロスの言う愛しいは下に見ている証拠であった。
優しく微笑む笑顔の裏でそんな事を思っているとガチャリと扉が開き、外から二人が帰ってきた。

