Devil†Story

少し歩いて教会から距離を取ると「……ぶはっ!」とロスが息を吐いた。



「あ゙ー……しんど〜…。あの匂いめっちゃきつかった…」


まるで苦虫を潰したような顔をしながら言った。お香でも焚いていたのであろう。香水を振りかけたように匂いは身に纏わりついていた。


「あぁ。服にも匂いが染み付いてるな」


「うわぁ本当だ…くせぇ!髪にもついてるしー…もうマジ最悪だ〜」


「帰ったらまずシャワーと洗濯だな。まぁなんにせよ…これで目はつけてきたろうからその内奇襲でもかけてくるだろうな。…つーか」


先程の橘との会話で聞き捨てならない発言があったのを思い出しロスを睨みつける。


「誰が"弟"だ?それになんだよ親が死んだとか、あの演技は。もっとマシな嘘つけねぇのかよ。気色悪い」


「仕方ないだろ?いくらバレバレスパイを演じてるとはいえ…2人で来るのに兄弟じゃねぇと怪しまれるだろうが」


「それは理解するが、なんで俺が弟なんだよ」


「どう見ても俺の方がでかいんだからお前の方が弟だろうが。それも反抗期真っ只中の!」


少し前屈みになりながらロスは嫌味を言うように言い返した。確かに2人で並んだ時にロスの方が身長が高い。さっきのように複数人いる際も話をするのもロスの方が多いので、一見すると兄に見えるのは否めない。


「うざ」


「ハイハイすみませんね〜。高身長でかっこよくて。…つーか…ブッ…お、お前…女だと思われてたじゃん……!フッ…あははは!ダメだー!我慢してたけど無理!!」


ゲラゲラと笑い出したロスに怒りが再燃する。


「笑ってんじゃねぇよ!あいつ目が腐ってんじゃねぇの」


「いやいや!やっぱお前は見た目が女なんだよ!声はそれなりに低いから気付いたけどな!お前が喋った時のあいつの顔!マジ笑える!」


ロスはでかい声でゲラゲラと笑っている。腹が立った俺は左ふくらはぎに蹴りを入れるが避けやがった。


「じっ…事実だからって…フフ…怒んなって…!あはは!」


「殺すぞ」


何度か蹴りを入れるが全て避けるか、受けられ更に怒りが湧いてくる。その後、しばらくは攻防戦が繰り広げられていたが、段々とカフェに近づいて来たので諦めた。その頃にはロスも笑うのをやめ、寧ろ溜息をつき始めた。


「はー…頑張って『表の仕事』しなきゃなー」


「うわっ…そうだった……。部屋に戻る暇がねぇな。ったく…めんどくせぇな…」


「マジでこの匂いきついのに最悪だ…。ていうか面倒はこっちのセリフだっての。俺まで巻き込みやがって。マジで覚えてろよ」


「…高身長のかっこいい"お兄さん"だから仕方ないんじゃねぇの?」


クロムはめんどくさそうに適当に答えた。


「馬鹿にしてるのか?……とにかく覚えてろよ」


「生憎と最近物忘れが酷いからどうかな」


「あぁ!?ふざけんな!」


「てめぇこそ。さっき馬鹿にした分覚えてろよ」


2人は言い争いをしながらBlack Cafeまで行った。