その夜。
稀琉の部屋に麗弥が入る。
「…ただいま、稀琉」
まだ目の覚めない稀琉に優しく声を掛ける。
心なしか、表情が和らいでいる気がする。
熱もだいぶ引いたみたいだ。
稀琉……。
安心したのもつかの間、麗弥の表情が曇り、悲しげになる。
―こいつの兄貴だってよ―
クロムの言葉が頭に過る。
…ほんまに?
稀琉の兄貴が……生きとったなんて…信じられへん。
もし本当なら………稀琉が心配だ。
「ほんま……やりきれへんわぁ…」
ポツリと呟いた時、部屋に誰かが入ってきた。
――ガチャリ
「クロム、ロス」
振り向くと、クロムとロスが入ってきた。
「麗弥帰ってきてたんだ〜。任務終わったばかりで看病?」
「うん。…稀琉の方が大変やし。大丈夫。俺は平気や」
「俺、10代やしな」と困った様に笑う麗弥。
何かを…きっと、稀琉のことで思い詰めていることくらいすぐに分かった。
「まぁ、お前のことはどうでも良い。体調はどうだ?」
「酷いなー、クロムはー。まっ、熱も引いてきたし…良くなってきてると思うで?」
文句を言いつつも麗弥は答えた。
「そうか。なら良い」
そう言って肩に止まっていたクローを撫でた。
…って、クロー居たんかい!?
全然気づかなかったわ…コートのせいで。
パッと見ただけだと、黒のコートと同調し、黒の中にアメジストの様な紫の目が輝いているようにしか見えない。
「カァ」
クローがカァと鳴いた。
クロムが手を近付けると、クローは甘える様に擦り寄った。
「…ほんま、クローはクロムになついてるよな」
「あっ?…まぁ、結構長いこと…一緒に居るからな」
クローを見ながらクロムは呟く。
…ほんま、クローに対しては…穏やかやなぁ…。
俺にも少しはそうしてくれたらいいのになぁ…と麗弥はしみじみと思った。
「俺と出会う前から一緒だしな〜」
「あぁ。俺がガキの頃から居るな」
「えっ?ちょい、待って」
ロスより前ということは…7年以上前ってこと?
「…クローいくつなん?」
鳥は生きて10年くらいだったはず。
俺と初めて会った時にはこの大きさだったから…結構な年のはずだ。
クローは俺の問いにバッとクロムの手から離れた。
…てか、クロー頭よすぎやと思うんやけど。
「…さぁ。いくつだろうな。俺が拾った時は……確か発達上多分6歳とかそんなもんだったな。まぁ、その時はクローも子どもだったが…」
クロムも目だけ上を見て、考えているようだ。
てか、マジ!?
ってことは…11歳!?
長生きやない!?
「めっちゃ長生きやん!」
「確かに。鳥は10年くらいが寿命だったと思うけどな」
ロスも不思議そうに呟いた。
「さぁな。どうなんだよ、クロー」
「カ…カァ…」
クローはなんだか、言いにくそう(多分)にクロムから視線を反らした。
「えっ?忘れた?…まぁ、そうだよな。俺も…正確に年を知ってる訳じゃないし。別にそんなこと気にしない」
「えっ?」
クロムの発言に驚く。
自分の年を…知らない?
「なんだよ」
俺の顔を見ながら面倒臭そうに聞く。
「いや、クロム…自分の年知らんの?」
「知らないな。多分お前等と同じくらいだって勝手に思って17と言ってるだけだ」
「せやけど…誕生日とかあるや――「ない」
「えっ?」
俺の言葉に被せるようにクロムは言い放った。
「俺に誕生日なんかない。いつ生まれたかなんて知らない。興味もない」
そう言い切るクロム。
そんな…誕生日を知らないなんて……。
って、ことは誕生日の祝いもして貰ったことないってことやろ?
ほんま…クロムの過去は分からへん。
きっと、言いたくないことなんやろなぁ…こないだのピアノの反応を見ると。
せやけど…悲しいことがあったんやろな。
俺は俺で…悲しいことがあったけど…
俺には姉さんが居たから乗り越えられた。
クロムには…居なかったんやろか。
――心から信じられる人が。
そんな…悲しいことあらへんわ…。
なんとなく空気が重くなった。
その時、慌ててクローがクロムに何かを言った。
「カッ…カーカー!」
「……」
クロムは黙ったまま、きっと、何かを伝えているクローが鳴き終わるまで黙って聞いていた。
そして、鳴き終わった後にフッと鼻で…でも、いつもよりは優しく、悲しく笑った。
「…別に気にしてない。お前が気にすることじゃねぇよ」
そう言った後、またクローを撫でた。
クローはスリッと顔をクロムの手に擦り付けた。
「まっ、クロムの年はどーでも良いとして」
ロスが今までの空気を断ち切るように口を開いた。
「なんか、いつも帽子被ってるからかは分からないけど…稀琉って変な癖っ毛あるな」
「えっ?」
「ほら、ここ。なんか、このいつも隠れているこの部分の髪が…左右どちらも明らかに上に跳ねてるじゃん」
ロスが指差すところを見ると、確かに稀琉の髪がその2ヶ所だけが、まるで角のように上に跳ねていた。
「だから、隠してるんじゃないのか?」
「確かにな。稀琉、帽子取られるの嫌いみたいだからね。それに、稀琉は帽子は絶対に取らないし」
確かに、稀琉は入浴、就寝意外では帽子を取ったところを見た事がない。
この癖っ毛のせいだろうか?
「まぁ、癖っ毛なんか嫌なもんやからなー。まっ、クロムはそんなん気にせんで良いくらいストレートやしな」
改めて見てみると、クロムの髪は結んで腰より下まで延びていて、それでいて艶もある。
「どうでも良いけどな。まぁ、目が覚めたらまた来る。じゃあな」
クロムはそう言うと、扉に向かった。
「もどんの?」
「あぁ。目が覚めてないしな」
「了解。じゃっ、麗弥お休み〜」
ロスがそう言うと、麗弥も手を振った。
「おっけぃ〜。お休みなー、クロム、ロス」
「あぁ、お休み」
「見てろよ、きちんと」
2人はそう言うと、部屋を出た。
稀琉の部屋に麗弥が入る。
「…ただいま、稀琉」
まだ目の覚めない稀琉に優しく声を掛ける。
心なしか、表情が和らいでいる気がする。
熱もだいぶ引いたみたいだ。
稀琉……。
安心したのもつかの間、麗弥の表情が曇り、悲しげになる。
―こいつの兄貴だってよ―
クロムの言葉が頭に過る。
…ほんまに?
稀琉の兄貴が……生きとったなんて…信じられへん。
もし本当なら………稀琉が心配だ。
「ほんま……やりきれへんわぁ…」
ポツリと呟いた時、部屋に誰かが入ってきた。
――ガチャリ
「クロム、ロス」
振り向くと、クロムとロスが入ってきた。
「麗弥帰ってきてたんだ〜。任務終わったばかりで看病?」
「うん。…稀琉の方が大変やし。大丈夫。俺は平気や」
「俺、10代やしな」と困った様に笑う麗弥。
何かを…きっと、稀琉のことで思い詰めていることくらいすぐに分かった。
「まぁ、お前のことはどうでも良い。体調はどうだ?」
「酷いなー、クロムはー。まっ、熱も引いてきたし…良くなってきてると思うで?」
文句を言いつつも麗弥は答えた。
「そうか。なら良い」
そう言って肩に止まっていたクローを撫でた。
…って、クロー居たんかい!?
全然気づかなかったわ…コートのせいで。
パッと見ただけだと、黒のコートと同調し、黒の中にアメジストの様な紫の目が輝いているようにしか見えない。
「カァ」
クローがカァと鳴いた。
クロムが手を近付けると、クローは甘える様に擦り寄った。
「…ほんま、クローはクロムになついてるよな」
「あっ?…まぁ、結構長いこと…一緒に居るからな」
クローを見ながらクロムは呟く。
…ほんま、クローに対しては…穏やかやなぁ…。
俺にも少しはそうしてくれたらいいのになぁ…と麗弥はしみじみと思った。
「俺と出会う前から一緒だしな〜」
「あぁ。俺がガキの頃から居るな」
「えっ?ちょい、待って」
ロスより前ということは…7年以上前ってこと?
「…クローいくつなん?」
鳥は生きて10年くらいだったはず。
俺と初めて会った時にはこの大きさだったから…結構な年のはずだ。
クローは俺の問いにバッとクロムの手から離れた。
…てか、クロー頭よすぎやと思うんやけど。
「…さぁ。いくつだろうな。俺が拾った時は……確か発達上多分6歳とかそんなもんだったな。まぁ、その時はクローも子どもだったが…」
クロムも目だけ上を見て、考えているようだ。
てか、マジ!?
ってことは…11歳!?
長生きやない!?
「めっちゃ長生きやん!」
「確かに。鳥は10年くらいが寿命だったと思うけどな」
ロスも不思議そうに呟いた。
「さぁな。どうなんだよ、クロー」
「カ…カァ…」
クローはなんだか、言いにくそう(多分)にクロムから視線を反らした。
「えっ?忘れた?…まぁ、そうだよな。俺も…正確に年を知ってる訳じゃないし。別にそんなこと気にしない」
「えっ?」
クロムの発言に驚く。
自分の年を…知らない?
「なんだよ」
俺の顔を見ながら面倒臭そうに聞く。
「いや、クロム…自分の年知らんの?」
「知らないな。多分お前等と同じくらいだって勝手に思って17と言ってるだけだ」
「せやけど…誕生日とかあるや――「ない」
「えっ?」
俺の言葉に被せるようにクロムは言い放った。
「俺に誕生日なんかない。いつ生まれたかなんて知らない。興味もない」
そう言い切るクロム。
そんな…誕生日を知らないなんて……。
って、ことは誕生日の祝いもして貰ったことないってことやろ?
ほんま…クロムの過去は分からへん。
きっと、言いたくないことなんやろなぁ…こないだのピアノの反応を見ると。
せやけど…悲しいことがあったんやろな。
俺は俺で…悲しいことがあったけど…
俺には姉さんが居たから乗り越えられた。
クロムには…居なかったんやろか。
――心から信じられる人が。
そんな…悲しいことあらへんわ…。
なんとなく空気が重くなった。
その時、慌ててクローがクロムに何かを言った。
「カッ…カーカー!」
「……」
クロムは黙ったまま、きっと、何かを伝えているクローが鳴き終わるまで黙って聞いていた。
そして、鳴き終わった後にフッと鼻で…でも、いつもよりは優しく、悲しく笑った。
「…別に気にしてない。お前が気にすることじゃねぇよ」
そう言った後、またクローを撫でた。
クローはスリッと顔をクロムの手に擦り付けた。
「まっ、クロムの年はどーでも良いとして」
ロスが今までの空気を断ち切るように口を開いた。
「なんか、いつも帽子被ってるからかは分からないけど…稀琉って変な癖っ毛あるな」
「えっ?」
「ほら、ここ。なんか、このいつも隠れているこの部分の髪が…左右どちらも明らかに上に跳ねてるじゃん」
ロスが指差すところを見ると、確かに稀琉の髪がその2ヶ所だけが、まるで角のように上に跳ねていた。
「だから、隠してるんじゃないのか?」
「確かにな。稀琉、帽子取られるの嫌いみたいだからね。それに、稀琉は帽子は絶対に取らないし」
確かに、稀琉は入浴、就寝意外では帽子を取ったところを見た事がない。
この癖っ毛のせいだろうか?
「まぁ、癖っ毛なんか嫌なもんやからなー。まっ、クロムはそんなん気にせんで良いくらいストレートやしな」
改めて見てみると、クロムの髪は結んで腰より下まで延びていて、それでいて艶もある。
「どうでも良いけどな。まぁ、目が覚めたらまた来る。じゃあな」
クロムはそう言うと、扉に向かった。
「もどんの?」
「あぁ。目が覚めてないしな」
「了解。じゃっ、麗弥お休み〜」
ロスがそう言うと、麗弥も手を振った。
「おっけぃ〜。お休みなー、クロム、ロス」
「あぁ、お休み」
「見てろよ、きちんと」
2人はそう言うと、部屋を出た。

