―勤務終了後 更衣室―

「お疲れ様です。稀琉さん」

石川がいつもの様に稀稀の着替えを手伝いに来ながら言った。

「お疲れ様、石川さん。いつもスミマセン」

「いえいえ。右肩の調子はどうですか?」

「えっと………」

そこで何故か稀琉はばつの悪そうな顔をした。

「? 稀琉さん?」

「あっと…だ、だいぶ良いですよ。アハハ」

稀琉は慌てて石川の問いに答えた。そんな稀琉に石川は「? なら良いですが…」と不思議そうに答えた。

「肩って抜けると癖になるみたいですから、これからの任務では気を付けて下さいね」

「あ…う、うん。気を付けますね」

稀琉は何故かキレの悪い返事をした。

どうやら、今の稀琉に怪我の話はしない方が良いようだ。

そう思った石川は「あぁ、そうそう」と話題を変えた。

「先程、オーナーから連絡があって…終わったら談話室に来て欲しいそうですよ」

「あ、うん、分かった。ありがとう、石川さん」

少しだけ悲しそうに笑いながら稀琉は言った。

「じゃあ、お疲れ様でした」

着替えが終わると石川は笑顔で稀琉に言った。

「お疲れ様でした!」

稀琉はいつもの笑顔でそう言うと、更衣室を出た。

パタンと扉が閉まる音が響いた。

「………」

石川は暫く考えていた。

「……最近元気ないな、稀琉さん。怪我…本当はよくないのだろうか」

ボソリと誰も居ない更衣室で、石川は呟いた。