―夜中 ロスSIDE―

「ん……」

ふ、と目が覚めた。

アレ…俺、寝てたのか…。

いつもの様に椅子に座ってる内に寝てしまっていたようだ。

俺は、睡眠なんか要らないのにな。

ロスは眠ることができるが、睡眠を取らなくとも良い体で、いつもは夜中に散歩や魔界に行ったり、本を読んだり、考え事をして過ごすことが多かった。

久々だな…寝るの。

あの時は…毎回、アイツに合わせて寝てたっけ…。

ふっと頬が緩んだ後に気付いた。

いつもならベッドで爆睡をしているはずのクロムの姿がない。

アレ…あいつ何処に行ったんだ?

時計を見てみると、今は夜中の3時だ。

普段なら起きてることはない。

クロムはどういう訳か、常人よりも睡眠を取らないといけない体質で、平均睡眠時間は10時間以上だ。

殆ど食事は取らないが寝ないことはなかった。

そのクロムが居ない。

トイレか?

にしては…ベッドが冷たい。

あいつ、俺が居眠りしてる間に何処に行ったんだか…。

何気なく立ち上がって窓を見たその時、探していた人物がそこに居た。

「あっ、あいつ…。あんなとこで何してんだ?」

クロムは中庭に居た。いつものようにコートを羽織り、目隠しをして剣を握っていた。

「…………」

暫く立っていたクロムだが、少し風が強くなった時だった。

――キィン

「!」

一瞬の内に剣を横に振るった。パラパラと落ちるのは風と一緒に飛んできた葉だ。

あいつまさか……。

その周辺を見てみると、訓練用のダンベルも置いてあった。

「…ふっ……」

なるほど、ね。そーゆーことか。

俺はクロムがしてることを悟り、思わず笑った。

そして、中庭に居たクロムを見るのをやめて、いつものように散歩に出掛けた。