「…囮の件は百歩譲って分かった。問題はその後だ。なんで俺がここのバイトなんかしなきゃいけねぇんだよ。報告なら鴉を使えばいいだろ。要はスパイを装えばいいんだよな?で、お前はここにそいつらが来るのも嫌なわけだ。だったら尚更ここでのバイトはいらねぇだろ」
ギクッ
一瞬ビクッと跳ね上がった刹那の動きを見逃さなかった。その反応で何故そうしたかを理解し眉間に皺を寄せる。
「そー…それはー…」
言葉を濁そうとする刹那に間髪入れずに顔を少し近付けて隠そうとしている真実を述べた。
「さては……給料別払いの俺を少しでも利用する気だったろ?」
クロムの言葉に隠せないと悟った刹那は焦り顔から笑顔はシフトチェンジした。
「……えへ♪」
「えへじゃねぇよ!てめぇもう『25』だろうが!そんなみみっちぃ事やる年じゃねぇだろ!」
一見童顔で若く見える刹那だがそれなりに大人の年齢だった。いや、世間一般的にはもちろん若いのだがここにいる従業員の殆どが10代の若者なのでどうしても上から数えた方が早かった。
「あぁー!気にしてる事を!いいじゃないか!見た目は18ぐらいだし!」
バン!と机を叩きながら言い返すその姿はとても25歳には思えなかった。
「寧ろ年相応の振る舞いをしろよ!俺は絶対やらねぇぞ、あんなクソみたいな仕事!」
「俺の大切なカフェをクソとか言わないで!お願い!ホールの爽やかくんが熱で急遽休みになったんだもーん。君は顔立ちいいから君が出るとお客さん沢山来ると思うんだよねー♪」
「ふざけんな!銭ゲバ野郎。やんねぇぞ」
「おーねーがーいー!」
刹那は駄々をこねる子どものように言った。こいつ……本当に25だって自覚あんのかよ……。溜め息をつくクロムに承諾を確信した刹那はニヤリと笑った…が。
「…断る」
呆れ返ったように返した答えはNOであった。
「えー!普通この流れで断る!?なーんーでー!」
「なんでじゃねぇよ!」
「こんなに頼んでるんだからやってよー!」
「無理だって言ってんだろ!」
「じゃあ今度のカフェイベントと少しの間のホール…どっちがいい?」
「ハァ!?あんなの誰がやるかよ!どっちも却下だ!」
「も〜!分からずや〜!!ていうかスパイやるなら相手からある程度分かりやすくしないと囮の意味がないじゃん。君はどう見ても高校生くらいなんだからこっちのバイトしてるってした方がいいでしょ!?それこそ変な感づかれたら学校に行ってもらわないといけなくなるし!…あっそれとも信者のフリして学生になる?」
「全寮制のエリート高校の校長とは仲良しなんだよね〜。いつでも入学させられるよ〜。高校生とバイトとイベントスタッフ…どれにする〜?」と黒い笑顔で問いかける。
「学校とかあんなクソみてぇなとこ行ってられるかよ!」
「さっきからクソクソ言わないの!でも嫌だろ〜学校に行くのは。だからホールスタッフしてよ〜。1時間だけでOKだから〜!」
「断るって言ってんだろ!今日しつけぇぞ」
普段から何かとカフェに入って欲しいと言ってくる刹那だが断るといじけながらも諦める。しかし今日は引く様子がなかった。その理由はすぐに明らかになる。
「だってカフェイベント近いから宣伝しときたいんだもん!」
カフェでは季節ごとにイベントをしていた。そのイベントでは集客率が高まり、そこからリピーターが増える。カフェの方のバイトはいわゆるイケメンや可愛い子を多く雇い容姿で売っているのだ。一種のホストのような売り方である。だからこそ中性的な容姿であるクロムは刹那にとってうってつけの人材であった。しかしクロムはそういった仕事は願い下げであった。全力で回避すべく抵抗する。
「もん!じゃねぇよバカ。マジで無理だから」
「1時間なんてあっという間だから心を殺してやって!君がイエスと言うまで俺は説得し続けるよ!」
いつまでも平行線を辿る言い合いに面倒になってきたクロムは強制的に終わらせることを決意した。
「しつけぇな!とにかく品出しならまだしもあの仕事は絶対にやらねぇからな」
「え?あ!ちょっと!?話終わってないよ!」
そう声をかける刹那をそのままに、クロムは会話を強制終了させて行こうとした。クロムも譲る気はないらしい。
「うぬぬぬ…かくなるうえは…!」
唸った刹那は奥の手を出すことに決めた。
「…いいの?だったら〜…キッチンの"あの人"を呼んで説得しようかな〜」
ピタリとクロムの動きは止まった。
「丁度キッチンも人が足りなくてね〜。きっと喜ぶよ〜」
「ふふふふふ」と黒い笑みを浮かべる刹那の方を向くクロムの顔はまるで苦虫を潰したようであった。
「…そうきやがったか。てめぇふざけんなよ」
「俺がバイトしてくれるらしいと言ったらきっと引きずってでも連れて行くだろうな〜」
あの人とやらはどうやら強引であり、クロムの苦手な人物らしい。クロムの顔が更に歪む。
「それを踏まえてどっちがいい?」
「汚ねぇぞ。てめぇ」
「ふふんだ。どーとでも言うがいい!本当に少しでいいから!ホールの仕事してる時は1時間だけでいいから」
ぎゃーぎゃーと言い合いをしている2人とは別に違う声が聞こえてきた。
「ぷっ……クロムお前あの仕事出来んの?あんなニコニコした仕事」
いつのまにか部屋にいたロスは窓際に座りながらニヤニヤと聞き返す。
「ロスてめぇ何処に行ってやがったんだ」
「内緒♪俺の事より自分の心配しろよ。くくっ…お前がまたあんな仕事するなんて…考えただけで笑える。前は笑いを堪えるの必死だったんだから…クスクス」
「笑ってんじゃねぇよ!ったく…なんで俺がこんな事やんなきゃなんねぇんだ………」
そこでクロムが一旦口を閉じて考えてからニッと笑った。
ギクッ
一瞬ビクッと跳ね上がった刹那の動きを見逃さなかった。その反応で何故そうしたかを理解し眉間に皺を寄せる。
「そー…それはー…」
言葉を濁そうとする刹那に間髪入れずに顔を少し近付けて隠そうとしている真実を述べた。
「さては……給料別払いの俺を少しでも利用する気だったろ?」
クロムの言葉に隠せないと悟った刹那は焦り顔から笑顔はシフトチェンジした。
「……えへ♪」
「えへじゃねぇよ!てめぇもう『25』だろうが!そんなみみっちぃ事やる年じゃねぇだろ!」
一見童顔で若く見える刹那だがそれなりに大人の年齢だった。いや、世間一般的にはもちろん若いのだがここにいる従業員の殆どが10代の若者なのでどうしても上から数えた方が早かった。
「あぁー!気にしてる事を!いいじゃないか!見た目は18ぐらいだし!」
バン!と机を叩きながら言い返すその姿はとても25歳には思えなかった。
「寧ろ年相応の振る舞いをしろよ!俺は絶対やらねぇぞ、あんなクソみたいな仕事!」
「俺の大切なカフェをクソとか言わないで!お願い!ホールの爽やかくんが熱で急遽休みになったんだもーん。君は顔立ちいいから君が出るとお客さん沢山来ると思うんだよねー♪」
「ふざけんな!銭ゲバ野郎。やんねぇぞ」
「おーねーがーいー!」
刹那は駄々をこねる子どものように言った。こいつ……本当に25だって自覚あんのかよ……。溜め息をつくクロムに承諾を確信した刹那はニヤリと笑った…が。
「…断る」
呆れ返ったように返した答えはNOであった。
「えー!普通この流れで断る!?なーんーでー!」
「なんでじゃねぇよ!」
「こんなに頼んでるんだからやってよー!」
「無理だって言ってんだろ!」
「じゃあ今度のカフェイベントと少しの間のホール…どっちがいい?」
「ハァ!?あんなの誰がやるかよ!どっちも却下だ!」
「も〜!分からずや〜!!ていうかスパイやるなら相手からある程度分かりやすくしないと囮の意味がないじゃん。君はどう見ても高校生くらいなんだからこっちのバイトしてるってした方がいいでしょ!?それこそ変な感づかれたら学校に行ってもらわないといけなくなるし!…あっそれとも信者のフリして学生になる?」
「全寮制のエリート高校の校長とは仲良しなんだよね〜。いつでも入学させられるよ〜。高校生とバイトとイベントスタッフ…どれにする〜?」と黒い笑顔で問いかける。
「学校とかあんなクソみてぇなとこ行ってられるかよ!」
「さっきからクソクソ言わないの!でも嫌だろ〜学校に行くのは。だからホールスタッフしてよ〜。1時間だけでOKだから〜!」
「断るって言ってんだろ!今日しつけぇぞ」
普段から何かとカフェに入って欲しいと言ってくる刹那だが断るといじけながらも諦める。しかし今日は引く様子がなかった。その理由はすぐに明らかになる。
「だってカフェイベント近いから宣伝しときたいんだもん!」
カフェでは季節ごとにイベントをしていた。そのイベントでは集客率が高まり、そこからリピーターが増える。カフェの方のバイトはいわゆるイケメンや可愛い子を多く雇い容姿で売っているのだ。一種のホストのような売り方である。だからこそ中性的な容姿であるクロムは刹那にとってうってつけの人材であった。しかしクロムはそういった仕事は願い下げであった。全力で回避すべく抵抗する。
「もん!じゃねぇよバカ。マジで無理だから」
「1時間なんてあっという間だから心を殺してやって!君がイエスと言うまで俺は説得し続けるよ!」
いつまでも平行線を辿る言い合いに面倒になってきたクロムは強制的に終わらせることを決意した。
「しつけぇな!とにかく品出しならまだしもあの仕事は絶対にやらねぇからな」
「え?あ!ちょっと!?話終わってないよ!」
そう声をかける刹那をそのままに、クロムは会話を強制終了させて行こうとした。クロムも譲る気はないらしい。
「うぬぬぬ…かくなるうえは…!」
唸った刹那は奥の手を出すことに決めた。
「…いいの?だったら〜…キッチンの"あの人"を呼んで説得しようかな〜」
ピタリとクロムの動きは止まった。
「丁度キッチンも人が足りなくてね〜。きっと喜ぶよ〜」
「ふふふふふ」と黒い笑みを浮かべる刹那の方を向くクロムの顔はまるで苦虫を潰したようであった。
「…そうきやがったか。てめぇふざけんなよ」
「俺がバイトしてくれるらしいと言ったらきっと引きずってでも連れて行くだろうな〜」
あの人とやらはどうやら強引であり、クロムの苦手な人物らしい。クロムの顔が更に歪む。
「それを踏まえてどっちがいい?」
「汚ねぇぞ。てめぇ」
「ふふんだ。どーとでも言うがいい!本当に少しでいいから!ホールの仕事してる時は1時間だけでいいから」
ぎゃーぎゃーと言い合いをしている2人とは別に違う声が聞こえてきた。
「ぷっ……クロムお前あの仕事出来んの?あんなニコニコした仕事」
いつのまにか部屋にいたロスは窓際に座りながらニヤニヤと聞き返す。
「ロスてめぇ何処に行ってやがったんだ」
「内緒♪俺の事より自分の心配しろよ。くくっ…お前がまたあんな仕事するなんて…考えただけで笑える。前は笑いを堪えるの必死だったんだから…クスクス」
「笑ってんじゃねぇよ!ったく…なんで俺がこんな事やんなきゃなんねぇんだ………」
そこでクロムが一旦口を閉じて考えてからニッと笑った。

