Devil†Story

その後…なんとかバカみたいに謝っていたら、許して貰えた。…最早諦めたに近いと思うけど。まだ俺を半分睨みながらクロムは溜め息をついた。少し鼻の頭と額が赤くなっている。


ク「本当に貴様という奴は…」


麗「ゴメンて!いつもは出来ない事が出来たら誰やってやってみたくなるやろ!?」


ク「開き直ってんじゃねぇよ!ったく…お前と居ると頭が痛くなる」


ポンッと持っていた本を机に置き、頭を抱えたクロムはそう言った。


麗「露骨に嫌がるの傷付くからやめてーや!というか稀琉はよくって俺がダメな意味がわからへんやけど?」


俺は間違えた事言うてへんやろ?そもそも稀琉はあんま抵抗せずにそのままにさせてんのに俺だけダメな理由分からんし!理由を待っていると即答で答えが返ってきた。


ク「アレにはもう慣れた。これ以上くっつかれては叶わねぇ」


「只でさえうざいお前は特にな」とまぁ、平然とそう言いなさった。


…やっぱ俺、嫌われてるんとちゃう?素直じゃないのは分かっているがそう思わずにはいられない俺なのでした。…いやいや!負けてる場合ちゃうわ。ここら辺はいつもと変わらへんからな。


も少し様子見てみんと…。


辺りを見渡すとクロムが読んでいた本が目に入った。


麗「アレ?クロム読んでるの"鳥籠の青い鳥"やん」


さっきは遠かったから分からなかったが、タイトルには“鳥籠の青い鳥”と書かれている。少し前から話題になってる小説家が書いている小説だ。


ク「…あっ?知ってるのか」


いかにも「お前が?」って顔をしているクロムに俺は言い返す。


麗「お前本読むのか?って思ってるやろ?意外に読書家なんやで!前作は"銀色の檻"だったやろ?ミステリー物の」


ク「お前が本を読むなんて微塵も思ってなかったからな。そうだな。その前は"七色に潜む灰"、"黄昏の藍"、"夜の白"あたりか?」


麗「せやせや!どれもめっちゃ考えさせられる書き方してるんよな〜。俺の方こそまさかクロムが読んでるとは思わへんかったわ」


ク「暇つぶしにな。たまたま目に入った"星空の黒は何を思うか"を読んでそっから興味が出てこの作者の本は読んでた」


麗「あぁアレな!デビュー前から書いてたやつで絵本調ではじまって読みやすいもんな!」


俺の言葉にクロムは素直に頷いた。そっか。ほんまに本好きなんやな。仕事にしか興味がない様に見えるから意外な一面見た感じや。そう心で思いながらも会話を続ける。


麗「俺も昔読んだ事あったわー」


ク「へぇ…。お前も読んだ事あるんだな」


麗「見とったよ〜。なんならフリーの携帯小説サイト時代から読んどったわ〜。確か星の会話から始まって途中まではえー感じに星の国とかの話してるんやけど…語り手でもある形が歪で黒っぽく見える星の子が虐げられてて自分の理想を交えた物語だったんよな。でも人間の夢や仲間のために頑張って中盤からは人気者になってく話やったよな?」


読んだとは言え万が一途中だったりしたらと思い最後のネタバレをしなかった麗弥だがその心配は無用だったらしくクロムは結末を話し始める。


ク「そうだな。だが結局最後は自分も含めた全てを消して無になるってとこで終わる」


麗「せやせや。あのラスト1ページでまさかそんな風になるとは思わへんかったな。最後のページが黒一色だった時はゾッとしたわ〜」


ク「俺は気に入ったがな。詳しく語られてない分あのページが全てだからな」


珍しくクロムが会話を切り上げずに話し続けてくれている。これはある意味チャンスやな。クロムはそういう趣味の話とかせぇへんし、このまま小説について話し続けてみるのもありやな。


麗「ほんまあの衝撃は忘れられへんな〜。そういえばさっき作品名だしてたけど結構読んでってたん?」


ク「そうだな。一応その本で物語は基本終わるから順序は関係ないが大体出版順に読んでた。中には興味ない話もあったから何冊かは読んでないがな」


麗「鳥籠の青い鳥は最新作だもんな。俺もこないだ読み終わったんよ。あれも衝撃的やったなぁ」


ク「あの黒に近い青のページに"幸せの青い鳥は鳥籠に"って書かれてたとこか?あの青い鳥を示唆する部分が何処かは読み手によって変わりそうだよな」


麗「へっ?なんで結末知っとるん?今読んでたの半分くらいだったよな?」


ク「新しい作品は一度速読して一通り物語を見るからな。今日はその後の読み込むところだったんだ。…それを貴様に邪魔されたがな」


恨めしそうにこっちを見るクロムを見て思わず目を逸らす。ほんまおっかないわ。


麗「ほんまゴメンて!てかさっき興味ないとか読んでないのもあったって言うとったけど、どれが興味なかったん?俺は全作品面白かったけどな」


クロムの中の怒りが再発しないよう、叩き込む勢いで質問を繰り返す。

ク「読んだもんだと"桃色の劣情"とか"きみどりとレモネードと机"だな。書き方とか嫌いじゃねぇけど内容が面白くねぇ」


麗「えー!あの甘酸っぱい感じええやーん!こういうの読まないと気持ちが暗くなるで〜?」


ク「うるせぇな。俺は最新作みたいのが好きなんだ」


麗「俺らまだ若いんやからそんな暗いのばっかやとじーさんになるで?」


ク「殺すぞ」


麗「クロムの為と思って言うてんねんのに〜…」


さらりと酷い事を平気で言うクロムさんに傷付きつつ任務のことを思い出して考える。


うーんほんまどうなんやろなぁ…。この感じはいつも通りなんだよなぁ…。口の悪さもこの感じも…。考え込んでいると落ち込んでると思われたらしく「ちっ」と舌打ち後に珍しくクロムの方から質問をしてきた。


ク「…参考までに聞いてやる。お前はあの作者のどの作品が気に入ってるんだ?」


麗「え?俺のお勧め?そーやなぁ…"桜の中の水色"やな!」


ク「…読んだことねぇな」


思った通りの反応に俺は待ってましたとばかりに話した。