―麗弥SIDE―


稀「さてどうしよっか?」


部屋を出た稀琉が帽子を直しながら言った。稀琉らしょっちゅう帽子を直している。きっと言われたことはないがこだわりの角度があるみたいだ。



麗「せやなー…。まずは世間話でもしてみる?何かあった時は話すのが1番やし♪」


人間話し合いが互いを知るために必要な行動である…が。言ってから俺はため息をつきたくなった。クロムの場合…言葉のキャッチボールしてくれへん事多いんだよなぁ…。しかーし!めげていても始まらなーい!


稀「そうだね…。そうしてみよっか」


少し考えてから稀琉が同意してくれたので俄然やる気が出てきた。


麗「決まりっ!」


稀「だったら二手に分かれてやった方が良いよね?」


「2人で行ったら怪しまれそうだし…「うぜぇ」って逃げられそう」と続ける。


確かにその方がええかも。絶対100%逃げるもん。それこそ「うぜぇ。くんな」って言いながら。せやけどな……。俺は心にある不安をぶつけた。


麗「なぁ…それさぁ…稀琉はええだろうけど…俺はうざがれそうやない?」


クロムやったら俺に対していつ何時でも「うるさい」って言ってきそうやからなぁ…。…うん。絶対言うなぁ…クロムは。


すると稀琉は笑いながら「大丈夫だよ。そしたらオレだってうざいと思うし」と言った。


麗「いやでもなぁ…」


稀「それに…案外ちゃんと話聞いててくれてるよ?あぁ見えて優しいし…。何かの邪魔さえしなかったらそんなに怒られない…よ」


そう笑顔やけど…少し悲しそうな顔をして言う稀琉。さっきの…刹那から聞いた話を気にしてるんやな。俺は瞬時にそう悟った。


そら…俺かて気になる事や。クロムは確かに愛想も口も悪いし…仏頂面で乱暴やけど…。
あんなんする奴やない。あんな…死体を玩ぶ様な事…絶対にせぇへん。


それにしてたとしても…それの原因を聞いてやるのも俺達の役目やし。俺は敢えて明るい声で答えた。


麗「まっそうだよなぁ。案外優しい所あったりするからな。大丈夫やなっ!」


そして笑顔でピースした。稀琉もニコッと笑って「…そうだねっ!」と答えた。


よし…。少しでも明るくさせられたかな?そうだと良いと俺は思った。


麗「じゃあ問題のクロム探しからやな」


稀「だね。じゃあ…オレはクロムの部屋の方の東棟を行くから、麗弥は西棟の方をお願いして良い?」


西棟か…書庫とかカフェに行く側の道やな。大方部屋に居るとは思うけどたまーにそっちの方に歩いて行くクロムを見かける。


今日中には一回様子見ときたいからな。正反対の方向で探すのが妥当だろう。俺は頷いた。


麗「西棟やな?分かった!」


稀「じゃあなんかあったらメールで♪」


麗「了解♪」


俺と稀琉はそう言って親指を立て「グッドラック」と言ってから分かれた。


麗「さーてそうは言ったものも…何処に居るんやろ〜」


さっきも言ったけど普段は部屋に引きこもるヒッキーさんやからなぁ…。まぁ、寝てるんやろうけど。…あ。寝てたらどうするかなぁ……。


そこでふと思いついた。


…んっ?


そーいえばさっきクロム部屋に戻って行った様な…。さっき伝言を伝えに来た時の事を思い出した。


あーあかん。


場所分かってたのに分かれてしもうた…。まぁ、2人ではいかへんのは変わらんやろうけど。


麗「やっぱ部屋やったかぁ…。まぁクロムだからな。しゃーないか。とりあえず万が一ってこともあるし西棟を見てからメールしてみるか」


そう思い書斎を覗いた時だった。


麗「あり?」


中に黒い人影があった。そう。部屋に戻ったと思っていたクロムだった。


(うそ〜ん…。完全に部屋やとおもっとった…)


クロムは椅子に座って何やら表紙が青い本を読んでいた。


(なんか…雰囲気変わるなー)


普段はいつもの感じでありパーソナルエリアが大きすぎて誰にも踏み入れられず…しかもさっきの刹那の話を聞いたのもあるがやけに好戦的なイメージがあるが…本を読んでいる今は少し穏やかに見える。


…今やったら大丈夫とちゃう?


そう思った俺は稀琉にメールをしてから書斎に入って行った。