Devil†Story

ーロスsideー


「………」


暗い廊下を歩いているロスは僅かに険しい表情をしていた。


「うーん……。これはあんまり良くねぇなー…」


先程2人からクロムの様子を聞いたロスは顎に指を当てながらブツブツと独り言を呟いている。


そうかー…。思ったよりも弛んできてるな。クロムにその気がなくとも結局は相手がどう捉えるかだからな。2人は俺等と仲良くなった気でいるってところが問題だ。


「ったく…。こうなんなら初めから話すのやめりゃ良かったのに。何回聞いても「借りを返しているだけだ」ってしか言わねぇし」


稀琉が輝太に言ったようにクロムは初めの1年半は2人と会話するのを断固拒否していた。それがある日突然返事をするようになり今の関係までと変わっていた。その事を何度クロムに問い掛けても同じ回答しか得られなかった。2人にそれとなく探りを入れてもみたが、2人も何故なのかは自覚がないようで確信を得ることが出来なかった。それでもこれまでは一線を引く事をしていた。しかしヤナの一件以降、稀流と一緒に勤務する時間が増えたからかここの所はグッと2人との距離が縮んだ気がしていた。聞けばロスが魔界に行った日の夜に無理矢理とはいえ稀琉の食事に付き合ったと聞いた。潔癖症のクロムが食堂に行くだけではなく、稀琉の会話に付き合ったと聞いた時は驚きが隠せなかった。


「…そりゃある程度は上手く溶け込まないと面倒だからさ。合わせんのは仕方ないけど……。お前くらい警戒心が強い奴が崩れるのは一瞬だからな。そこが危険だよなぁ……」


あー…。あのクソじじぃ…本当タイミングが悪ぃんだよ。俺が居れば純血の吸血鬼と戦わせてもあそこまで大怪我させなかったし、2人にバレないようにしたのに。うーん……。あいつに任せといて大丈夫かぁ?あいつも慣れない事をしてて疲れてきてんだろうけど…。



「…まっ。この生活が終わって元に戻るなら何も言うつもりねぇから様子見かなぁ。…いや、俺に当たってきやがったからなー…。もう少し嫌味言ってやってもいいだろ。俺の癒しのにゃんこタイムを邪魔しやがったしな」


猫饅頭の事を思い出したのであろう。ロスは「さーて。何て言ってやろうかな〜。多分逃げてんだろうからたーっぷり嫌味考えてやろ〜」とニヤニヤとしながらクロムに言う嫌味を考えながら部屋へ戻った。