Devil†Story

「ちょっと!やめてよ、クロム!店員さん困ってたじゃないか!」


路地裏までクロムを引き摺っていった稀琉はクロムの方を見て説教を始めてきた。


「うるせぇな。こっちはイライラしてんだよ…!」


更に激しく貧乏ゆすりをし始めるクロムに、溜め息をつきながら稀琉は携帯をいじり始めた。


「今、携帯で見てみたけど…どうやら中には朝から並んで買った人もいるみたいだよ。これじゃあ、いつ入荷するか分からないよ」


「…ハァ?朝から並んで買っただぁ?バカじゃねぇの。クソ…大方この辺のコンビニは行き尽くしたってのに…」


「こればかりは仕方ないよ。とりあえず今日のところは帰ろ?」


「チッ……」


クソ暇人共が…買い尽くしてんじゃねえよ、腹立つ…!あー…あいつ…忘れてたりしねえかーー


ーー「ほら!クロム!綺麗にしてやったぞ!約束の物、忘れんなよ!」


「……」


起きて早々、ロスにそう言われた事を思い出す。空になったスプレーを片手に昨日蜘蛛の巣があったところを指差して、少年のような顔をしていた。もちろん蜘蛛の巣は綺麗に片付けられていた。
あの調子じゃ忘れてねえだろうな……。これで買えなかったと知ったら…。


ーー「ハァー?!買えなかっただぁ!?ふざけんな!!なんの為にこの俺が疲れてんのに蜘蛛の巣とってやったと思ってんだ!?大体!先に買ってから行けよ!もしくは代わりのものを買ってくるとか出来んのかお前は!!あー!もうあったまきた!」


ー「てめぇ本当に何ヶ所か見てきたんだろうな!?見つかってねえのにのこのこ帰ってきてんじゃねえよ!見つかるまで帰ってくんな…!」ー
…とか言って締め上げてきやがるな…。あのゴリラ…加減してこねえだろうから、やってきたら脛に蹴りを入れてやる。それにしても…部屋に帰ってまで密着されるとか耐えられねー……。


「あー…クソ……。あいつ絶対うるせぇぞ…面倒くせぇ…」


「そんなに楽しみにしてたんだね、ロス」


「起きた時からな。チッ……。仕方ねえな…。刹那にそれっぽいもんねえか聞いてみるか……」


「……」


帰路についている間、ぶつぶつと文句を言うクロムを宥めつつ、2人はカフェに帰った。いつものように途中で別れようとすると、稀琉がクロムの腕を掴んだ。


「クロム!ちょっと来て!」


「あぁ?なんだよ、忙しいんだっての」


「いいから!」


「おい!引っ張るな!」


何故か稀琉の自室前まで連れてこられ「ちょっと待ってて!すぐ来るから!」と部屋に入った稀琉を待つ事になった。


…なんだっての。刹那んとこ行ってこないとなんねえのに…。イライラしながら部屋の前に居ると言葉通りすぐに稀琉は戻ってきた。


「はい、これ!」


「なんだーー」


手に持った可愛い袋を手渡され中身を見ると、そこにあったのは先程まで探し求めていた猫饅頭だった。


「お前これ…」


「実はね!朝、ロスに会ったんだ」


稀琉はニコニコと笑いながら今朝の出来事を話し始めた。