「さっきから見てたけど…ちょっと言い過ぎじゃないかな?初めに君達が輝太にボールぶつけようとしてたよね?それを守っただけなのに、そこまで言われなきゃいけない理由は何?それにドッチボールするなら、まずメンバー決めてからじゃないとダメじゃない?やってない人にぶつけるのはルール違反だよ」
「は!?なんだよ!触んな!不審者!」
「不審者って…まぁ、そう見えても仕方ないけどね。でも、オレの友達に酷い事を言ってたんだから見過ごせないでしょ?」
「うるさい!もやし!弱そうなくせして!」
「うーん…。それは関係ないと思うけど…とにかくもう終わりにしようよ?ね?」
「俺に口答えすんーー」
「……終わりにしようって言ってるよね?…オレが優しく言ってる内にやめようね。…ね?」
笑顔はそのままだったが、怒ったような声のトーンに太一達は凍りついたように固まった。グッと肩を掴む手が少し力んでいる。その前から怒っている事に気づいていたクロムは興味が無さそうに欠伸をしていた。
「ッ…!」
「…そうだ。ごめんなさいしないとだよね?」
「は?やだ!そんなのする訳ないだろ!」
「学校行ってるよね?悪い事をしたらごめんなさいって謝らないといけないって習わなかったかな?」
「悪い事してねーし!」
「……ふーん?してないんだ?…それほんとに言ってる?オレはそう思わないな。…謝りなよ。2人に」
「うっ…!」
段々と本気で怒り始めた稀琉を見て溜め息をついた。…ガキ相手に殺気出すなよ。
「…稀琉。ガキ相手に本気になんな」
「でも…」
「悪い事してねぇって思ってる奴に謝らせても意味ねぇだろ。さっさと消えてもらえ。うるさくて叶わねぇよ」
野良犬を追い払うように手を払ったクロムは再び本に目を向ける。
(うー…あんな事を言っといてそのままなんて納得出来ない…。この子達に謝らせたいけど…。でも、クロムがそれを望んでないもんね…うー…!歯痒い…!)
チラッとクロムを見ると全く気にする素振りもなく本を読んでいる。一方、小学生達は涙目になっている。
(う…確かに…子ども相手にやり過ぎちゃったかも…。悔しいけど…ここは引こう…)
稀琉が深呼吸をし、太一から手を離した時だった。
「駄目!!」
「!」
突然の大声にそちらを向くと、輝太が顔を真っ赤にして怒っていた。
「輝太?」
「……」
「駄目!謝ってよ!!クロムお兄ちゃんに酷い事を言ったの…謝って!!」
「はぁ!?嫌だよ!そいつもいいって言ってんだからお前が命令すんな!」
「命令じゃないよ!!酷い事を言った太一くんが悪いんだよ!僕のことはいいよ!でも!クロムお兄ちゃんには謝って!!」
「悪くないし!俺は悪くない!こいつが余計な事をやったのが悪いんだろ!」
「悪いよ!!」
「ちょっと輝太…落ち着いて」
段々とヒートアップしてきた2人を見かねた稀琉は間に入るが輝太は目に涙を溜めて詰め寄って行った。
「謝れ!」
「はぁ!?馬鹿な輝太のくせに!うるさいんだよ!」
太一が輝太の肩を軽く小突くと、輝太は尻餅をついてしまった。
「いた…!」
「ちょっとちょっと!2人とも落ち着いて!」
慌てて稀琉が間に入ろうとした時だった。
ーーギロッ
「「!」」
「ッ…!?」
輝太がキッと太一を睨みつけた。それに含まれた僅かな殺気にクロムと稀琉は反応する。
…なんだ?今…僅かに殺気を出した?
本から目を離して輝太を見る。クロムの位置からは輝太の顔は見えない。しかし、太一の怯えた表情を見れば、どんな表情をしているのかは想像に容易い。止めに入った稀琉も唖然としている。その隙に輝太は立ち上がって太一に掴みかかった。
「いたっ!」
太一が押し倒される。輝太は右腕を振り上げた。
「ーー!ダメだよ!輝太!」
稀琉がハッと気付いて声を上げるも、輝太はそのまま腕を振り下ろした。
「ッ…!!」
太一が顔を守るように腕を交差させた。
「ーー輝太!」
ーービクッ!
少し大きな低い声で名前を呼ばれ、ピタリと止まった。声をあげたのはクロムだった。
「あ……クロム…お兄ちゃん…」
ハッと我に返った輝太は恐る恐る振り返る。クロムは少し険しい顔をしてじっと輝太を見ていた。
「……いいのか?そいつ殴ったらお前も同じになるぞ。そいつと同じになりたいなら止めないが。……もし俺の為にやってるなら余計なお世話だ」
「ッ……」
体中に力が入っていたのか荒く呼吸を整える。自分がやろうとしていた事に気付いて僅かに震えていた。
「…輝太。クロムの言う通りだよ。落ち着いて」
稀琉が輝太の肩を掴んで立たせ、その場から離す。太一は唖然としていたが、すぐに立ち上がって悪態をついた。
「この…!輝太のくせに!ふざけんなよ!!明日先生に言ってやるからな!!」
「そうだそうだ!!」
「ッ……!」
カタカタと震えている輝太の背中を稀琉はさすって落ち着かせる。
「ちょっと…君達さ……。いい加減にーー」
稀琉が流石に一言言おうと口を開いた瞬間であった。
ーーバンッ!!
「わぁ…!」
集団で文句を言っていた太一達の間を何が駆け抜けていった。それは後ろの木に当たって跳ね返った。
「クロム!」
それはクロムが手に持っていたボールであった。足を振り上げているところを見ると、そのボールを蹴り飛ばした様だ。クロムが履いているブーツは戦闘用だ。当たれば大怪我にもつながる様な勢いで蹴られたボールは階段の下に落ちて行った。
「……おら。ボール返してやったんだ。…さっさと消えろ、クソガキども」
低い声でそう言うと、先程よりも強く睨みつけた。
「ひっ…!くっ…クソ…!行くぞ!」
クロムの気迫に押された太一達は一目散に逃げて行った。それを見たクロムは鼻で笑った後、ベンチに座り何事もなかったかのように再び本を読み始めた。
「は!?なんだよ!触んな!不審者!」
「不審者って…まぁ、そう見えても仕方ないけどね。でも、オレの友達に酷い事を言ってたんだから見過ごせないでしょ?」
「うるさい!もやし!弱そうなくせして!」
「うーん…。それは関係ないと思うけど…とにかくもう終わりにしようよ?ね?」
「俺に口答えすんーー」
「……終わりにしようって言ってるよね?…オレが優しく言ってる内にやめようね。…ね?」
笑顔はそのままだったが、怒ったような声のトーンに太一達は凍りついたように固まった。グッと肩を掴む手が少し力んでいる。その前から怒っている事に気づいていたクロムは興味が無さそうに欠伸をしていた。
「ッ…!」
「…そうだ。ごめんなさいしないとだよね?」
「は?やだ!そんなのする訳ないだろ!」
「学校行ってるよね?悪い事をしたらごめんなさいって謝らないといけないって習わなかったかな?」
「悪い事してねーし!」
「……ふーん?してないんだ?…それほんとに言ってる?オレはそう思わないな。…謝りなよ。2人に」
「うっ…!」
段々と本気で怒り始めた稀琉を見て溜め息をついた。…ガキ相手に殺気出すなよ。
「…稀琉。ガキ相手に本気になんな」
「でも…」
「悪い事してねぇって思ってる奴に謝らせても意味ねぇだろ。さっさと消えてもらえ。うるさくて叶わねぇよ」
野良犬を追い払うように手を払ったクロムは再び本に目を向ける。
(うー…あんな事を言っといてそのままなんて納得出来ない…。この子達に謝らせたいけど…。でも、クロムがそれを望んでないもんね…うー…!歯痒い…!)
チラッとクロムを見ると全く気にする素振りもなく本を読んでいる。一方、小学生達は涙目になっている。
(う…確かに…子ども相手にやり過ぎちゃったかも…。悔しいけど…ここは引こう…)
稀琉が深呼吸をし、太一から手を離した時だった。
「駄目!!」
「!」
突然の大声にそちらを向くと、輝太が顔を真っ赤にして怒っていた。
「輝太?」
「……」
「駄目!謝ってよ!!クロムお兄ちゃんに酷い事を言ったの…謝って!!」
「はぁ!?嫌だよ!そいつもいいって言ってんだからお前が命令すんな!」
「命令じゃないよ!!酷い事を言った太一くんが悪いんだよ!僕のことはいいよ!でも!クロムお兄ちゃんには謝って!!」
「悪くないし!俺は悪くない!こいつが余計な事をやったのが悪いんだろ!」
「悪いよ!!」
「ちょっと輝太…落ち着いて」
段々とヒートアップしてきた2人を見かねた稀琉は間に入るが輝太は目に涙を溜めて詰め寄って行った。
「謝れ!」
「はぁ!?馬鹿な輝太のくせに!うるさいんだよ!」
太一が輝太の肩を軽く小突くと、輝太は尻餅をついてしまった。
「いた…!」
「ちょっとちょっと!2人とも落ち着いて!」
慌てて稀琉が間に入ろうとした時だった。
ーーギロッ
「「!」」
「ッ…!?」
輝太がキッと太一を睨みつけた。それに含まれた僅かな殺気にクロムと稀琉は反応する。
…なんだ?今…僅かに殺気を出した?
本から目を離して輝太を見る。クロムの位置からは輝太の顔は見えない。しかし、太一の怯えた表情を見れば、どんな表情をしているのかは想像に容易い。止めに入った稀琉も唖然としている。その隙に輝太は立ち上がって太一に掴みかかった。
「いたっ!」
太一が押し倒される。輝太は右腕を振り上げた。
「ーー!ダメだよ!輝太!」
稀琉がハッと気付いて声を上げるも、輝太はそのまま腕を振り下ろした。
「ッ…!!」
太一が顔を守るように腕を交差させた。
「ーー輝太!」
ーービクッ!
少し大きな低い声で名前を呼ばれ、ピタリと止まった。声をあげたのはクロムだった。
「あ……クロム…お兄ちゃん…」
ハッと我に返った輝太は恐る恐る振り返る。クロムは少し険しい顔をしてじっと輝太を見ていた。
「……いいのか?そいつ殴ったらお前も同じになるぞ。そいつと同じになりたいなら止めないが。……もし俺の為にやってるなら余計なお世話だ」
「ッ……」
体中に力が入っていたのか荒く呼吸を整える。自分がやろうとしていた事に気付いて僅かに震えていた。
「…輝太。クロムの言う通りだよ。落ち着いて」
稀琉が輝太の肩を掴んで立たせ、その場から離す。太一は唖然としていたが、すぐに立ち上がって悪態をついた。
「この…!輝太のくせに!ふざけんなよ!!明日先生に言ってやるからな!!」
「そうだそうだ!!」
「ッ……!」
カタカタと震えている輝太の背中を稀琉はさすって落ち着かせる。
「ちょっと…君達さ……。いい加減にーー」
稀琉が流石に一言言おうと口を開いた瞬間であった。
ーーバンッ!!
「わぁ…!」
集団で文句を言っていた太一達の間を何が駆け抜けていった。それは後ろの木に当たって跳ね返った。
「クロム!」
それはクロムが手に持っていたボールであった。足を振り上げているところを見ると、そのボールを蹴り飛ばした様だ。クロムが履いているブーツは戦闘用だ。当たれば大怪我にもつながる様な勢いで蹴られたボールは階段の下に落ちて行った。
「……おら。ボール返してやったんだ。…さっさと消えろ、クソガキども」
低い声でそう言うと、先程よりも強く睨みつけた。
「ひっ…!くっ…クソ…!行くぞ!」
クロムの気迫に押された太一達は一目散に逃げて行った。それを見たクロムは鼻で笑った後、ベンチに座り何事もなかったかのように再び本を読み始めた。

