「え!?怪我?」
稀琉は俺の方を見てから、すぐに輝太の方を向いて膝をついた。
「輝太。クロムの言ってる事はほんとなの?」
「えっと……その……」
目線を合わせた稀琉から逃げるように視線を逸らす。指をいじって必死になんて答えようか考えている。
「……左足」
「え?」
「……」
俺が怪我をしている部位を口にすると稀琉は再び俺の方を向いた。輝太は目を伏せて黙りこくっている。
「…左足を打撲か何かしてるだろ。だから走らず、俺にも飛び付かなかったな?歩き方が少しおかしかったしな」
「確かに…。…ちょっとごめんね!」
「あ…!」
稀琉が間髪入れずにオーバーサイズの長ズボンを捲り上げる。太ももには大きな痛々しい痣があり、ふくらはぎ等にも紫色の痣があった。
痣だけではなく、大きな痣の側には大きめの絆創膏がされているが、かなり出血しているらしく血が滲んでいた。
「え…!こ、これ結構酷い怪我だよ!」
傷を見た稀琉は眉をひそめている。稀琉の表情を見た輝太は慌てて弁明を始めた。
「あっ、あのね!家出てすぐに転んじゃったんだ!だから怪我してるだけだよ!」
「転んじゃったって……。それにしては、酷くない?」
「遅くなっちゃったから急いできたから…ち、近くの階段で転んじゃっただけだよ!だから…家で絆創膏貼ってから来たの!」
そう言う輝太だが、太もも付近の傷はともかく、ふくらはぎ辺りの痣は明らかに今日転んで出来たものではない。もっと前からあったはずだ。
「でも…こっちの怪我は違うよね?」
稀琉もその事に気付いてふくらはぎの怪我を指差した。
「ぼ、僕おっちょこちょいだから!よく怪我するんだ!転んだりぶっつかったりさ!ドジだよね〜!」
「あはは」と笑う輝太の笑顔は…やはり無理をしていると言うか、嘘が含まれている。
「……輝太」
「な、なぁに?」
俺の声にその笑顔を貼り付けたまま、輝太はこちらを向いた。パッと見は嘘をついているようには見えない笑顔だ。だが…俺はこの瞳を知っている。それがどんな意味を持っているのかも。だから…機会を与える事にした。
「……いいんだな。それで」
「え?」
「クロム?」
「…それでいいんだな?」
不思議そうにしている稀琉を無視し、俺は輝太の目をじっと見つめる。やはり、その琥珀色の瞳はいつもの様な輝きはなく、何処か濁っている様に感じた。
少しの間、沈黙が訪れたが輝太は考えた後に答えを導き出した。
「……どういう事かよく分からないけど…本当だよ。お母さんにも…よく言われるんだー。どうしたらドジじゃなくなるのかなー?」
困ったように笑い、そう言った輝太の答えに俺は全てを確信した。
…そうか。それでいいんだな。やっぱりお前は……馬鹿な奴だ。
俺は最後の機会を振った輝太に対してそう思いながら「…そうか。お前がそう言うならそれでいい」と返した。
「…うん!心配してくれてありがとう!」
笑って返してくる輝太を少し見た後に、俺は目を逸らして携帯を開いて作業を始めた。俺の様子を見た稀琉は輝太に優しく話しかけていた。
「輝太。その絆創膏血が凄いから新しいのに変えようか。それと今日はゆっくり過ごそうね。慣れてるのかもしれないけど、小さな怪我でも甘く見たらダメだよ」
「う、うん。ありがとう」
稀琉の言葉に頷いた。その後、稀琉は持っていた応急処置セットから同じ位の絆創膏を取り出して貼り替えた。横目で傷を確認したが、やはり転んだ様な切り傷には見えなかった。稀琉もそう感じていた様だが何も言わずに丁寧に怪我の処置をしていた。
その後、無理は禁物と言う事で話をしたり、地面に絵を描いたりして遊んでいた。時折、いつものように輝太が俺の膝にくっついていたが、いつもよりも強く体を俺に密着させていたように感じた。
来るのが遅かった事に加えて、16:30には帰らないといけなかったらしく、すぐに時間になり、輝太は帰って行った。
稀琉は俺の方を見てから、すぐに輝太の方を向いて膝をついた。
「輝太。クロムの言ってる事はほんとなの?」
「えっと……その……」
目線を合わせた稀琉から逃げるように視線を逸らす。指をいじって必死になんて答えようか考えている。
「……左足」
「え?」
「……」
俺が怪我をしている部位を口にすると稀琉は再び俺の方を向いた。輝太は目を伏せて黙りこくっている。
「…左足を打撲か何かしてるだろ。だから走らず、俺にも飛び付かなかったな?歩き方が少しおかしかったしな」
「確かに…。…ちょっとごめんね!」
「あ…!」
稀琉が間髪入れずにオーバーサイズの長ズボンを捲り上げる。太ももには大きな痛々しい痣があり、ふくらはぎ等にも紫色の痣があった。
痣だけではなく、大きな痣の側には大きめの絆創膏がされているが、かなり出血しているらしく血が滲んでいた。
「え…!こ、これ結構酷い怪我だよ!」
傷を見た稀琉は眉をひそめている。稀琉の表情を見た輝太は慌てて弁明を始めた。
「あっ、あのね!家出てすぐに転んじゃったんだ!だから怪我してるだけだよ!」
「転んじゃったって……。それにしては、酷くない?」
「遅くなっちゃったから急いできたから…ち、近くの階段で転んじゃっただけだよ!だから…家で絆創膏貼ってから来たの!」
そう言う輝太だが、太もも付近の傷はともかく、ふくらはぎ辺りの痣は明らかに今日転んで出来たものではない。もっと前からあったはずだ。
「でも…こっちの怪我は違うよね?」
稀琉もその事に気付いてふくらはぎの怪我を指差した。
「ぼ、僕おっちょこちょいだから!よく怪我するんだ!転んだりぶっつかったりさ!ドジだよね〜!」
「あはは」と笑う輝太の笑顔は…やはり無理をしていると言うか、嘘が含まれている。
「……輝太」
「な、なぁに?」
俺の声にその笑顔を貼り付けたまま、輝太はこちらを向いた。パッと見は嘘をついているようには見えない笑顔だ。だが…俺はこの瞳を知っている。それがどんな意味を持っているのかも。だから…機会を与える事にした。
「……いいんだな。それで」
「え?」
「クロム?」
「…それでいいんだな?」
不思議そうにしている稀琉を無視し、俺は輝太の目をじっと見つめる。やはり、その琥珀色の瞳はいつもの様な輝きはなく、何処か濁っている様に感じた。
少しの間、沈黙が訪れたが輝太は考えた後に答えを導き出した。
「……どういう事かよく分からないけど…本当だよ。お母さんにも…よく言われるんだー。どうしたらドジじゃなくなるのかなー?」
困ったように笑い、そう言った輝太の答えに俺は全てを確信した。
…そうか。それでいいんだな。やっぱりお前は……馬鹿な奴だ。
俺は最後の機会を振った輝太に対してそう思いながら「…そうか。お前がそう言うならそれでいい」と返した。
「…うん!心配してくれてありがとう!」
笑って返してくる輝太を少し見た後に、俺は目を逸らして携帯を開いて作業を始めた。俺の様子を見た稀琉は輝太に優しく話しかけていた。
「輝太。その絆創膏血が凄いから新しいのに変えようか。それと今日はゆっくり過ごそうね。慣れてるのかもしれないけど、小さな怪我でも甘く見たらダメだよ」
「う、うん。ありがとう」
稀琉の言葉に頷いた。その後、稀琉は持っていた応急処置セットから同じ位の絆創膏を取り出して貼り替えた。横目で傷を確認したが、やはり転んだ様な切り傷には見えなかった。稀琉もそう感じていた様だが何も言わずに丁寧に怪我の処置をしていた。
その後、無理は禁物と言う事で話をしたり、地面に絵を描いたりして遊んでいた。時折、いつものように輝太が俺の膝にくっついていたが、いつもよりも強く体を俺に密着させていたように感じた。
来るのが遅かった事に加えて、16:30には帰らないといけなかったらしく、すぐに時間になり、輝太は帰って行った。

