「えー!?麗弥ったらそんな事してたの!?」


「うん!それでそこの川に落ちちゃって大変だったんだよ!」


「………」


左右から聞こえる声に俺はイラついていた。あの後、何故かこいつ等は俺の左右に座り、話し始めたからだ。
…声がでけぇんだよ…普通に話せねぇのか。
何故か段々と2人の声は大きくなって来ている。耳が痛くなって来ている所に更に追い討ちをかけられた。

「ねぇ!クロム聞いてた?」


左から聞こえてくる稀琉の馬鹿でかい声に俺の怒りは最高潮に達した。


「うるせぇんだよ!そんなでけぇ声出さなくとも聞こえてるっての!!」


「だって返事してくれないんだもん〜」


口を尖らせていじける稀琉の表情に更にイラついた。…こいつ本当に17かよ。刹那といいこいつといい…なんでここの奴等の精神年齢は幼稚園で止まってんだ。聞こえてんのを無視してるに決まってんだろうが。少しは頭を使えよ。


「だから大きな声で言わなきゃと思って!!」


「うるせぇっての!!俺はじじぃか!大体なんで俺を挟んで話してんだよ!避けてやるから隣で話せ!」


そう言って立ち上がろうとしたが、右手に重みを感じた。見てみると輝太がしがみつくように俺の手を掴んでいた。
…しかしこいつ距離感バグってるよな。普段もこんな感じなのか?初めて会った時も俺やロスに構わず引っ付いてやがったし…。知らねぇ奴にくっつくなって習ってねぇのかよ。
そんな俺の考えとは真逆にまるで離さないかのように腕を掴んでいる輝太は稀琉に話しかける。

「分かった!そしたら僕が真ん中に行くね!でも、クロムお兄ちゃんと手を繋いでたいから座る場所変えよう!」


左手は骨折という事になっていて固定されている。今は右から輝太、俺、稀琉の順に座っているので稀琉と俺を入れ替えて自分は右隣に座りたいって事なのだろう。
…怠いがうるさくされるよりかはマシか。溜め息をついて移動しようとすると今度は左足を稀琉が掴んできた。


「えー!オレもクロムの隣に座りたい!」


…は?何言ってんだこいつ。
稀琉の方を見ると本人は大真面目なようで俺が動かないように左足を掴んでる手に力を込めていた。
強く掴まれると気持ち悪ぃからあんま力むなっての…。
大体なんで俺の隣に来たがるんだ気持ち悪い。輝太ならまだしも稀琉は意味分かんねぇだろ。


「あ?何言ってやがんだーー「だって普段こうやってあんまり一緒に居られないし!オレもクロムとくっついてたいもん!」


何を言ってるのかと問いかけようとした俺の言葉に被せる様に、これまた呆れるような事を言ってくる。
……何言ってるんだこいつは。こないだからこいつには羞恥心ってもんがねぇのか。


「お前何言ってーー「ダメ!僕だってクロムお兄ちゃんにくっついてたいー!稀琉お兄ちゃんは僕よりクロムお兄ちゃんと一緒に居られるんでしょ?ならいいでしょ?」


再び俺の言葉は輝太の言葉に掻き消され、更に強く俺の腕を掴んできた。


「お前等いい加減にーー「くっつけないよ!輝太こそ抱っこしてもらったんだからいいでしょー?」


今度は稀琉が俺の左脇腹辺りにくっついてくる。
…わざとか?わざと俺の言葉に被せて来てんのか?こいつら。
先程から何度も言葉を被せてくる2人に段々と怒りが込み上げてくる。


「少しは話しを聞けーー「抱っこは抱っこだもん!それに僕はクロムお兄ちゃんをあっためる役があるから稀琉お兄ちゃんが僕の隣に来てよ!」


俺の手を握った輝太は俺の手が冷たいと思ったのだろう。俺の腕と手を掴んだ自分の方に寄せた。


「おいーー「オレだって体温高い方だもん!」


稀琉も意地になって俺の体を自分の方に寄せてきた。
この間、俺の言葉全てにこいつらは被せて来た。言いたい放題言って俺の体を引っ張り合っている。



ーーブチッ


そこで俺の怒りは最高潮を突破どころか限界値まで達した。


「いい加減にしやがれ!!お前等俺を抱き枕か何かと勘違いしてんのか!?離れろ!!俺の言葉に被せてくんな!!少しは話を聞け!!ガキども!!!」


「「はい!」」


クロムが我慢できず怒鳴りつけると2人は勢いよく返事をした。桜が蕾を作り始めた穏やかな公園内に似つかわしくない声が響き渡っていたのであった。