ーーそして今に至る。


左腕から手にかけては固定されており、動きづらい事この上ない。傷はまだ残っているが、これ自体はもう痛みも何もない“特殊メイク”と同じだ。こんな俺が何故、療養中にも関わらず公園に居るか。“リハビリ”だそうだ。リハビリと気分転換も兼ねて公園に行こうと稀琉に言われ、無理矢理連れて行かれているのだ。


「やっと来たねー!輝太クロムに抱っこされたんだね!いいなぁ、オレにはくっついてくれないのに」


スッと輝太を降ろすと稀琉は阿呆な事を言い出した。


「違ぇよ。こいつが俺の事おぶるとか抜かしやがって、うるせぇから抱えてきただけだ」


「えー!輝太ったらクロムの事、おんぶしようとしてたのー?」


「そう!本当は僕がおんぶしようと思ってたんだけど、クロムお兄ちゃんがヒョイって!」


「そうなんだね!良かったねっ!輝太!」


そう言いながら俺の側に来た稀琉は耳打ちしてきた。


(ちょっとクロム。そんな事して傷は大丈夫なの?)
(…てめぇなめてんのか。こんなヒョロガキ抱えるくらい出来るっての)
(確かに輝太は細いけど、左肩が特に酷いだけで全身傷だらけなんだから無茶しないでよ)
(だから大丈夫だって言ってんだろ。分かったらこんなままごと終いにしろ。さっさと俺を元の生活に戻せ)
(全治3週間の怪我人が何言ってるの!)
(じゃあ部屋で療養させろ)
(ダメだよ!そしたらクロム部屋から出てこないじゃない!)


「お兄ちゃん達、何お話ししてるのー?コソコソ話しはダメなんだよー!」



輝太の言葉に稀琉は慌てて「なんでもないよー!今度オレもおんぶしてってお願いしてただけー!」と返していた。…こいつもっとマシな言い訳思いつかねぇのか。なんで同じ歳位の野郎を俺がおぶってらんなきゃなんねぇんだよ。稀琉の言い訳の幼稚さに溜め息が出た。