コツッ――…ッ……



ローファーのかかとを響かせてたどり着いた四階は、最上階だという。



「間に合った。」


その言葉に横に立つ結城を見上げる。


「何が?」


うん、と言って、結城は部屋のカーテンを開けはじめた。



しめきったカーテンで真っ暗だったこの部屋は、結城がカーテンを全開にすると、まばゆい光で満ちた。




――…夕焼け。



「きれい…。」


思わず呟いた。


金色の光いっぱいで、なにもかもがキラキラして見える。


まるで宝石みたいに。



でも少し、胸がちく、とした。



あの部屋と似てたから。





「楠に見せたかったんだ。」



少し誇らしげにして、あたしの目の前に立った。




「……こういうの、彼女とかにしたほうがいいよ。」



そんなセリフ、さらっと言うんだもん。



「いないから。」



妙に納得できた。


言わないけど…。




「そろそろ本題に入ろうよ。これを見てほしかった、なんて交換条件あるわけないでしょ?」




思い出を刺激するこの部屋を、できれば早く出たかった。



「そうだな。」



そう言って、部屋のどまんなかにある大きなかたまりに近づいた。



ここに来たときから気になって、気にしないようにしてた。



だって、あるはずがないもの。




だって、結城は知らない。


この学校では汐以外、誰も知らないはずなの。


だから、まさかって思った。


有り得ないって。




ずっと否定して、その物体にかけられた布をとってほしくなかった。





結城が布を取り払おうと、手をかける。