雪の中走ったことを思い出す。


結城は何度もあたしの手を掴んで、あたしは何度も振り払った。




……てゆーか、あんなに印象的な出来事あったのに、「なんかした?」って…。


あたし、怒鳴ったりもしたのに。

それが原因だと思わないのかな。






「……も、いい。」


「え。」


これ、口癖なのかな。

理解できてないのかもしれない。



「言ったってしょうがないし。」


そう言って踵を返そうとしたとき。


「…じゃあなんで泣きそうだったんだ、グラウンドで。」





……意地悪。


最初から言えばいいのに。

しっかり覚えてるんじゃない。




「…そんなことない。」

だって泣けないもん。


背を向けて言った小さな呟きは果たして結城に届いたのか。