彼女は僕ら男達のオアシス。彼女が最前列で授業を受けているシャンとした後ろ姿を見ているだけで、胸が踊る。


「なあ、高橋。俺、毎日彼女の事で頭が一杯で何も手につかねえんだよ。このままじゃ、大学留年しちまうよ」

ある日、田中は僕に悲壮な声で訴え、意志のこもった声で続続けた。

「明日告白するよ。彼女に」

「本当か!?でもライバル沢山いるぞ。あの人類学の授業に出席してる野郎共、みんな彼女を狙ってんじゃねえの?」

「…だよな。あんな綺麗な人、今まで見たことないもん。人類学の男達が、全員“敵”に見えてくるよ」

田中はそうつぶやいて、僕に続けた。

「もし告白が上手く行かなかったら、全員殺しちまおうかな…」

そう冗談まじりにつぶやいた田中の目は、今まで見た事も無い程に真剣だった。