「…100年もの間眠り続ける“フリ”をするのは、本当に大変だったわ。

魔法使いに掛けて貰ったのは、老けない魔法だけ。

私が目覚めるまでのね。

100年の間、数え切れないくらい多くの王子達が私にキスし、目覚めさせようとしたわ。

でも、私は目覚めなかった。

王子様。私はアナタのキスで目覚めたんじゃない。

私がアナタを“選んで”自分で目覚めたのよ。

だって結婚は女にとって、とっても重要な事だわ。相手選びは最も大切。100年ぽっち、何て事ないわ。

そうーー。

“幸せ”は自分で掴むものなのよ」

そう言って眠り姫は柔らかに微笑んだ。

その微笑みは辺りに咲き誇る薔薇によく似て、恐ろしい程に美しかった。