「そうね…一つだけ言えるのは…」

そこまで姫が言いかけた時、今や夫となり父となった王子が、城からこちらへ向かって来るのが見えた。

「あ、お父様だわ!お父様ー!!」

父を見つけた娘は、ブロンドの髪をなびかせて王子の元に走り寄って行った。

薔薇が咲き乱れた庭には、その甘い匂いが夢の様に漂う。

嬉しそうに抱き合って笑う二人を遠くで見つめる姫は、小さな声で独り言の様につぶやいた。