顔面蒼白な白田をなだめ、警部は拡声器を使いしゃがれた声を張り上げる。


「安川!今年も一つもチョコを貰えないお前の気持ちも分かる。しかしチョコ質は卑怯だぞ!」

「うるせえ!!この30年間一度もチョコを貰ったことが無い俺の気持ちなんか、貴様らにわかるもんか!」

安川は夕日に照らされた窓を開け放し、握りしめた真理子ちゃんチョコと共にその身を乗り出した。

美しい緋色の夕日が安川の持つピンク色のチョコ質を包む。

安川は窓の下から自分を見つめる警部と白田に叫んだ。

「…こうなったら、このチョコ、手紙もろともこの場で食ってやる!」