「あ、」 立ち尽くすあたしに、京ちゃんは短い声をあげてから振り返る。 それから、思い出したようにゆっくりあたしの傍へと戻ってきて、整った顔立ちが近付く。軽く音を立てて触れたのは冷たい唇。 「浮気禁止ねー」 ニコリと笑う悪戯っ子みたいな微笑は、いつもの京ちゃんで、 あたしは立ち尽くしたまま、もう振り返らずに夜道に消える後ろ姿をただぼんやりと眺めていた。