「君と出会ったのは必然だ。どうする」






僚は、迷いのない口調をあたしに向ける。


その言葉の意味を、あたしは履き違えてはないだろうか。あたしは、どうしたいのか。もうダメ、頭の中ぐちゃぐちゃ。



「どうも、ないです。初め、まして、だから」


あの夜なんか無かった事にして。



カラダが覚えていても、感情が忘れたくない、と悲鳴をあげても。




「…帰ります」




あたしは席を立って、個室を出る。



すれ違いに一穂がいて、「聖?」と首を傾げたけど、あたしはこれ以上この場所にはいる事なんて出来ない。



「今日はもう帰るね。お兄さんと一穂はゆっくりして」



あたしはそう言って、一穂を振り切った。