皮肉な事にその場所は、僚と過ごしたホテルの近くの和食料亭。あたしはあまりこんな所来た事がないし、一穂は会社での付き合いとか、それ以外でも何度か利用してるみたいで慣れているけど、なんで今日、この場所なのか戸惑った。
「一穂。」
あたしは一穂を覗き込む。
「話は、後。気になるけど、とりあえず会わせたい人がいるから」
笑った一穂はいつも通りで、フワリとした茶色い髪が揺れる。罪悪感はあるけど、やっぱりこうして一穂の横に並ぶのは違和感なく当たり前。居心地が良くて、優しいこの空気を手放せるのか私。
「そっか、なんかごめんね。だけど急なんだから」
あたしは視線を逸らして、自分のラフ過ぎる格好を眺めた。
「うん、あの人はいつも急なんだ」
一穂は苦笑して、「聖は可愛いよ」とあたしの頭を撫でた。

