朝焼けを迎えた青い時間は澄んでいて、秋の匂いがする空気が肌を刺すようにあたしを包み込む。

夜が、終わってしまったこの時間に星はもう見えない。



寂しさと、やるせなさを含んだこの数分が、あたしを益々追い詰める。



僚と別れて、数分。





『次に、君に出会ったら離さない』


僚が眠りにつく前、そう言った。



『もし、“次”があったとしても、あたしはあなたなんか知らないふりをします。』



あたしはそう言って笑った。



中々離さない彼がやっと眠りについたのを確認してそっとホテルを出た。


連絡先も、フルネームも知らない。まして、彼はあたしの事なんて何も知らない。マンションだってあの辺は沢山あるから、あたしの住む場所を特定するのはきっと難しいし、僚がそこまでするとも思えないし。



これで、終わり。



ただ一度の裏切りが、どうなるのか、肌寒い空気に疲れた体が癒やされる筈もなく、ぼんやりと朝焼けを眺めた。