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そして、結局、あたしは何故か名も知らないこの人の車に乗っている。警戒心を抱かなかった理由は分からない。この人が美形だから、とかそんな単純な話だと言われればそうかもしれないし、だけどこの人の空気が嫌いじゃないのも事実で、
「無口だな」
なんて、ぐだぐだ考えていたら低い声が思考を遮る。
「…この近くに住んでるんですか?」
だから、何となく、当たり障りのない会話を用意した。
「いや、最近まで日本を離れていた。ここに寄ったのは仕事と、私用の為だ。」
「そ、ですか。昼間は時計台の所で何を?」
あたしの質問にも彼は何の淀みもなくあっさり答える。きっと、この上等のスーツの様に上等な身分を持ってるに違いない、と何故か確信出来るのはこの人のどこか優雅な雰囲気かもしれない。
「人を待っていたが、都合があわなかった。まあ、仕方ない。」
特に何の感情もこめずそう言った言葉に少し笑う。真面目で神経質そうなのにどこか適当な口調がアンバランスで、それでいて似合うから、変。本当に不思議な人。

