貴子さんの走るように告げた言葉の意味を考える間もなく、貴子さんは颯爽と店を出て行った。


日本航空002便サンフランシスコ行き────


頭が勝手に彼女の言葉を反復する。


そんなの、なんで、


もう、訳が分からない。

貴子さんの意思なんて何ひとつ汲み取れないあたしは馬鹿なのか。確かに彼女は『もう久瀬さんには関わらないで』と氷の塊を投げ付けた筈なのに、寒かったでしょ?と言わんばかりに最後に火種をくれた。



判断力がない、


優柔不断、


あたしを表す単語全てが頭を回るのに、これじゃ駄目だ、と叫ぶあたしも確かにいる。