フゥと息を吸うと静かに吐き出す。

貴子さん、僚の婚約者。『利害の一致した関係』らしいけど、よく分からない。あたし以上に貴子さんはあたしの事を知らないだろう。だけど、偶然出会ったにしては強引過ぎる。

もう一度息を吐く頃に、扉が空いて、カツカツと人物を特定するかのようなヒールの音が響いた。

あたしは息を飲み込んで、貴子さんを見上げる。


「今日も暑いわね」



貴子さんは指先でハタハタと仰ぎながら、女優顔負けのサングラスを外した。