* * *

珍しく京ちゃんは先に来ていて、カウンターのいつもの席に肘をついたまま座っていた。扉の音でも振り返らない。あたしが横に座って初めて声を出す。

「お疲れ~」

京ちゃんはあたしを見もせず、緩い声を上げた。ああ、気が抜けるったら。なんか肩を張ってたのが馬鹿みたい。

「お疲れ、待った?」

「待った。お詫びに此処でキスしてよ」

「やだよ」

「ふ、羞恥プレイ笑えるのに」


なんて奴だ。


「あら、京君とひじりちゃんそんなにホットな関係だった?」



話を聞いていたのかマスターがおや、と首を傾げた。