「キョウを返してって。あたしにそんな事言ったって仕方ないのに」

泣いた麻由の顔が忘れられない。言うつもりなかったのに、ごめん。でも京ちゃんの心に触れるには、はっきり伝えなきゃ届かない。


「突き放せないなら、とことん大事にしたら」


あたしが抑えきれず、漏らした言葉に京ちゃんが笑う。動揺したそんな顔だった。


「大事に、出来る立場じゃないでしょ。家庭を壊さす気もない。好きだとか甘い事言う訳じゃない。傍にいる事が本当は吐き気がする位、つらい。聖、俺に麻由は救えない。」


一気にそう言った京ちゃんが、自嘲したように目を細める。吐き出した、それは真実、京ちゃんの想いだ。報われない、とそう言いたいのか、


「―――京、ちゃ」


その表情が、切なくて、あたしはそこで息を呑んだ。