あの日――― 『彼』と再会してから、店に行くのは初めてで、別に意識しないでもなかったけど、実際、二度目に会うことはもうないだろう、と思ってた。 あたしにとって忘れられない過去は、 彼にとっては消え去ってしまいたい出来事だろうから。 とにかく、そんな事を考えたのはもっと以前で、 バーの扉に手をかけた時までは、マスターの作る裏メニューのパスタに期待を膨らませていたのに。