「…ばからし」

自分で呟いた言葉に自嘲する。誰に向けたいのか分からない。

キスだけで、想いの柵を外した麻由。

キスさえも、今まで出来なかった京ちゃん。

あたしは、

指先に力を込める。背伸びをして、いつか京ちゃんが『星空見せてあげる』と言ったあの緩い笑顔を思い出す。

複雑なこの渦の中でさえも、あの不確かな笑顔が一番確かな気がして、無意識に小さく笑ってしまった。


ねぇ、京ちゃん。君が嬉しいと思うならそれで全て良い気がする。回り道をしても通じ合うなんてすごくない?

なんだろ、これ。もしかしてあたしのおかげなのかい?
そうならいいな。前を向く理由になるから。
ドラマみたいだねぇ、といつものように笑ってみせられるから。



―――ひたすら痛いこの胸を我慢する事が出来るから。