「面倒くさっ。ひじり行こ」


ぼんやりするあたしの手を引く京ちゃん。


「あ、え、うん」


あたしの視線はまだその二人に向けられていて、だけど京ちゃんのその単調なトーンにクールダウンする。



「待て」


なのに、


「久瀬さん?」


僚の短い声に即座に眉を上げた『貴子』さん。


「待たないー」


答えるのは京ちゃん。


「君には言ってない」


ああ、もう、その調律された口調がどれ位冷たく聞こえるかこの人は知らないんだ。