* * *
「飲みに行こうよ~」
それから京ちゃんから連絡があったのは2日後。何もなかったみたいに、何も知らないみたいに、いつだって京ちゃんは変わらないから。
そうして、あたしは今、見慣れたカウンターに座りながら、いつも通りのカクテルを口にする。
「てゆうかマスター」
まだ京ちゃんは来てない。大体、京ちゃんの方が先にいる事なんてないし。
「んっ?」
マスターは片眉だけあげて、柔らかな細い目をあたしに向ける。
「忘れてたけど」
うん、ちょっとだけ、忘れそうになってたけど。
「久瀬さんに、」
あたしはそこで言葉を切った。何となく、『久瀬さん』と呼ぶのに抵抗があったから。だって、もしかしたら、あたしの名字だったのかもしれない。なんて今更、馬鹿みたいな違和感。

