それから、その人が『京』という名前だとわかるのは程なくしてから。
遅れて登場した彼は女性陣の注目の的で、冷めた表情はその容姿によく似合っていて、牽制するように多分キスシーンの彼女がぴったりと横にくっついていた。丁度麻由があたしが掛けていたカウンターに腰を下ろそうとした時、現れた『京』ちゃん。
来てくれたんだ。確か麻由はそう言って嬉しそうに笑ったと思う。
『面倒くさいからヤだったんだけどね、』
本当に鬱陶しそうに言う彼。
『京はすぐそんな事いうんだから』
プゥと膨れた麻由。
『綺麗でしょ。』
ヒラヒラと淡いピンク色のパーティドレスを掴んで首を傾げてみせた。
『…全然』
京ちゃんの返事に、隣の女がクスと笑う。
麻由はまた不機嫌に顔をしかめたけど、あたしには京ちゃんのその素っ気ない言葉よりも、その瞬間に見せた柔らかい表情の方がずっと印象的だった。

