結局、黙り込むしか出来ない選択肢。車ってゆう密室の中で訳の分からない緊張感はやっと解れて、あたしは軽く肩で息を吐いた。
「仕事、何してるんですか」
BAR【a】のオーナーなんて知らなかった。
「色々」
簡潔な返事。これ以上どう広げりゃいい。いや、知らない方がいい、のかも。深くなると困るから。こんな時なのに何故か京ちゃんの顔が頭に浮かんだ。
「聖は、出版会社だったか。保育士はもう辞めたのか」
なのに、
僚はあたしがまだ発してもいない職業を言い当ててあっさり『保育士』なんていいやがる。あのちょい悪オヤジ、一体どこまで話しているのか。

