分からない。本当に。何を考えてるのかさっぱり分からない。 引っ張られるまま、歩いて、歩道を渡った向かい側に軽く駐車されていたのは、何だか懐かしい、見た事あるようなないような車。 促されるまま助手席に座って、視線のやり場に困る。あたし、今、確実に参ってる顔だ。 静かなエンジン音、座り心地の良いシート、馴染んだ革と僅かに香料の匂い。視界の低い車は上品に発進して、あたしはぼんやり、まるで、ドラマのワンシーンみたいだと思った。