夜明けが近付いて、うっすらと周りが明るくなる。それだけで肌に刺す空気も違って感じて、どこからか朝を知らせる小動物達の声がした。


この瞬間が、一番、嫌い。


‘夜’が終わってしまった、と思うから。



隣で寝息をたてる、無邪気な寝顔を眺めてからその頬にそっと指を這わす。



気付かない彼は、それでもくすぐったいのか形良い眉をクッと曲げてみせた。



…帰るから。




夜明けは待ってくれないみたいだし。



あたしは彼を起こさないように、二人には少しキツいシングルベッドから降りると、脱ぎ捨てた服を拾い上げて部屋を出た。



肌寒い季節に入った空気は、澄んでいて、気怠い体に渇を与える。



隅に停められてある車に乗って、あたしは彼のマンションを後にした。