「お前をさ、美乃に会わせたのは俺だろ? あの時、美乃も結構参ってて……。まぁクリスマスもずっと病院じゃ、落ち込むのは当たり前だけどな……」

「初めて会った時、無理矢理病院に運んで恨まれたよ。知らなかったとは言え、美乃には悪いことしたんだよな……」

「なに言ってるんだよ。おかげで、大事に至らなかったんだからな……。それに、今はお前らも付き合ってるんだしさ」


俺は頷いたあとで、小さなため息を漏らした。


「どうした? 浮かない返事だな」

「俺さ、最近よく考えることがあるんだ……」

「なんだよ? 俺でよかったら聞くから、言ってみろ」


俺の悩みの理由は、心配そうに眉を寄せた信二にはきっとわかっている。
それでも、あえて俺の言葉を待ってくれているようだった。


言い難いけれど、誰かに話を聞いて欲しい。
そしてできれば、それは信二に聞いてもらいたいことだった。


俺を見つめる瞳から、そっと視線を逸らす。
少しの間を置いてビールを一口飲み、深呼吸をしてから口を開いた。


「最近、ずっと不安なんだ……。俺は、美乃のことが本当に好きで、なにがあっても傍にいたいと思ってる。できれば、ずっと傍で支えていきたい。でも……本当は違ったんだよな……」

「なにが違うんだ?」

「美乃を必要としてるのは俺の方で、支えられてるのも俺なんだよ。これまでは本気で恋愛してこなかったくせに、今は美乃を失うことを恐れてるんだ……」


脳裏に浮かぶのは、柔らかく微笑む美乃の姿。
だけど……。


「美乃がいなくなれば、俺はどうなるんだ……って、ずっとそんなことばかり考えてる……」


彼女の笑顔ならいつだってこんなにも鮮明に浮かぶのに、いとも簡単に消えてしまう。
まるで、俺の不安を煽るように……。