「お前らって、恋人同士みたいだよな！」


突然そんなことを言い出した信二に、俺は目を見開いて静止してしまう。


「店員さんにも間違えられちゃったもんね！」


反して、美乃はさっきのことを思い出したらしく、クスクスと笑っている。


今までの美乃と違う……よな？


そう感じたのは、いつもなら否定する彼女が、今日は店員に間違えられても信二の言葉にも否定しなかったから。


「いっそのこと、付き合ったらいいんじゃねぇか⁉」

「うんうん！　染井ってなにげにいい奴だしね！」


信二と広瀬もそんな美乃の様子に気付いたのか、口々に冗談混じりに言った。


「おいおい……」


俺が笑って誤魔化していると、彼女が戸惑いがちに微笑んだ。


「考えてみようかな……」


控えめな言い方だったけれど、確実に前向きな言葉だった。


「へ……？」


信二と広瀬は、無理だと思いながらあんな風に言ったんだろう。
自分たちから振った話題なのに、ふたりとも鳩が豆鉄砲を食らったように唖然としていた。


恐らく一番驚いているであろう俺は、突然訪れた状況に呆然としながらも美乃を見つめる。


「美乃……。今、なんて言った？」


「だから……考えてみようかな、って」


再度同じ言葉を彼女の口で紡がれた直後、溢れ出る喜びを隠せなくなる。
信二と広瀬も、顔を見合わせながら嬉しそうに笑っていた。