たったの一五分。
その時間を、病院に隣接している公園で過ごすことにした。


「私はここにいるから、ふたりで散歩してきたら?」

「いいんですか?」

「せっかくだし、ふたりで過ごしたいでしょう? でも、なにかあったらすぐに駆け付けられるように、私の目が届くところにいてね」

「はい。ありがとうございます」


公園の中に入ってすぐに、内田さんはそう言ってベンチに腰を下ろした。
俺は小さく頷き、周囲を見渡した。


美乃の車椅子を少し先で止め、その隣にあるベンチに腰掛けた。
公園はそんなに広くないから、俺たちがいるところから内田さんの姿がよく見える。


「寒くないか?」

「うん、大丈夫」

「気分が悪くなったら、すぐに言えよ?」

「うん」


彼女は微笑んだあと、公園内をクルリと見回した。


「ここに来るの、久しぶりだね」

「ああ、そうだな」


ここには、外出許可がもらえた時に何度かふたりで来ていた。
暖かい時期にはベンチに座って缶ジュースを飲んだけれど、もう随分と前のことのように思える。


「ねぇ……」

「ん?」

「この間気づいたんだけど、このマリッジリングって対になってたんだね」

「ああ、重ねるとハートになるんだ」


自分のリングを外して美乃の左手の薬指に着けると、ふたつのマリッジリングが重なって真ん中にハートができた。


「病室で手を繋いでる時に気づいて嬉しくなったんだけど、ずっと体調が悪くてまともに話せなかったでしょ……。だから、言えてよかった……」


彼女は幸せそうに微笑みながら、ずっと薬指を眺めていた。