翌日、俺は二日酔いでひどい頭痛に襲われ、なかなか起き上がることができなかった。
だけど、美乃には朝から病院に行くと言った手前、閉じようとする目を必死に開いて重い体を起こした。


日課のランニングは体調を考慮していつもよりも短めに終わらせ、身支度を整えてから急いで病院に向かった。
自分の吐く息の白さが、冬になったことを教えてくれる。


ハロウィンも過ぎた今、街に並ぶ店のショーケースにはクリスマス用品が飾られるようになっていた。
こんな景色を見ると、去年のクリスマスイヴを思い出してしまう。


「早いもんだな、一年って」


苦笑混じりに呟いた言葉が、雑踏の中に消えていく。
もうすぐ、彼女と出会って一年が経とうとしていた。


「いっちゃん……」

「そのままでいいよ」


いつものようにノックをしてから病室に入ると、美乃はベッドに横になったまま力なく微笑んだ。
起き上がろうとした彼女を笑顔で制し、ベッド脇の椅子に腰を下ろす。


「ごめんね……」

「バカ、そんなこと気にするな。それより顔色が悪いな……。熱は?」

「昨日は平気だったんだけど、今朝からちょっと気分が悪くて……。今は微熱気味なの……」

「そうか……。朝飯はちゃんと食えたか?」

「ううん、ほとんど残しちゃった……。今日は点滴ばっかりみたい……」


美乃は、点滴の針が刺された自分の左手を悲しそうに見た。
その腕には無数の針を刺した痕跡があり、ところどころに青い痣ができている。


それは、今までに数え切れないほどの点滴と採血をしてきたことを、どんな言葉よりも雄弁に物語っている。
痛々しい腕を見ながら、彼女の髪にそっと触れた。