老人の回想シーン。


地上に40日間もの間、大雨が降り、地上には何も残らぬ地球の姿。その空を浮かぶ一隻の舟にノアと動物達が居た。


ノア『神よ…なんて酷い事を…こんな素晴らしい星に、人間は私一人なんて…』

ノア『私一人が生き残ったところで、私には何も出来ません。』


ノア『神よ、“父”を“母”を…そして、この星に住む“皆を”帰して下さい』


ノアが舟の甲板に出て、両手を合わせ、膝ま付き、空を見上げていた。


そのノアの頭上に在った雨雲が晴れ、ノアに一片の光が差し込んできた。


ノアの目の前に光輝く一つの丸い発光体が現れた。


ノア『お〜神よ、私の言葉をお聞きになられたのですか。』


発光体『ノアよ…私の親愛なる息子…ノアよ…お前の望みを聞き入れる訳にはいかん。』


ノア『なぜです』


発光体『人は醜く、愚かで、傲慢で、欲深い…だから何時までも、争いは絶えぬ…そして私が手を下さなくとも、人は自ら破滅へと向かう…その人間の破滅へと続く道の被害は罪の無い、動物や、この星までをも巻き添いにしてしまう…』


発光体『だから消した…だから動物達を残し、この星を、ノアお前と動物達に預ける事にした』


ノア『私には出来ません。私一人では何も出来ないのです』


ノア『もう一度…もう一度だけ人々にチャンスを下さい』


発光体『それはならん。』

ノア『なら、私がこの星の人々を変えて見せます永遠に私がこの星で生き続け、私がこの星の人々を正しき道へと導きます』


発光体『お前の人への深い愛情は分かった。』


ノア『では』


発光体『だが、それは無理なのじゃ…ノアよ、人間の寿命とは、穿かない物だ、お前も何時かは“死”を向かえる…そのお前亡き後、この星はどうなる?仮にお前が人々を正しい道へ導いたとして、お前が死んだらまた人間は元に戻り、お前を忘れ、また繰り返す…』

発光体『その時お前はどうするつもりじゃ?』