滝沢とリンが、病院の出口へ向かって歩いている。


志穂〔大声〕『 登美也君〜リンちゃんの事宜しくね』


滝沢〔大声〕『はい』


周りの人達が振り返る。



リン(声大きいよ〜何か恥ずかしいじゃん)



病院の外



滝沢『ねぇ、リン…何でさっき志穂さんに俺の事“彼氏”って紹介してくれたの?リンの記憶はまだ戻って無いんでしょ?』


リン『良いんだよ…別に…記憶なんて無くたって』


滝沢『え?』


リン『もし… “もしも”だけど、このまま私の記憶や、皆の記憶が戻らなかったとしても、“今までの滝沢君の記憶”を思い出せなかったとしても…私は、“今日からの記憶”だけだとしても、滝沢君の事を好きで居られる気がしたの』

滝沢『…』(リン…)


リン『だってそうでしょ?今までの記憶が無かったとしても、それならそれで良いじゃないまた一からスタートすればそれで、消えた記憶の分を取り戻す位、一杯楽しい思い出を作って行けば良いだけじゃない私、“滝沢君”とならそれが出来ると思うの』


滝沢『……』


リン『やっぱ、変かなぁ私…私の記憶の中では、滝沢君と会うのは今日が初めてなのに…』


滝沢『………』


リン『やっぱ、変だよねゴメン、今のは忘れて』

滝沢『変なんかじゃ無いよ…その言葉が聞けて、スッゲ〜嬉しい』

滝沢『…でも…』


リン『でも?』


滝沢『でも、俺のせいで、リンをこんな事件に巻き込んで…今、俺はリンに何て言ったら善いか、自分でも良く分からないんだよ……』

リン『それなら』


リンがそっと滝沢の目の前に手を出した。



リン『 滝沢君、手を出して』


滝沢がポケットから手を出すと、リンが滝沢の手に何かを渡した。


お金の音『チャリ〜ン』

滝沢の手の中には“520円”が入っていた。


リン『こう言う、“言葉が見付からない時”に使うんでしょこの方法』


リン『記憶はまだ戻って無いけど、受けとってくれますか?』


滝沢『うんんじゃ、“遠慮無く”』


そこから、滝沢とリンは雪華の家に向かう…