幕末Drug。





ザッ…


地面を蹴る音がしたと同時に、原田さん目掛けて木刀が振り下ろされる。


ガツッ!!


木と木がぶつかり合い、至近距離で不敵な笑みを向け合っている二人。


『…足、速くなったみてェだな。』


『ああ、最近気付いたんだよ…踏み込みの大切さ、って奴にな。』


口調は余裕そのものだけど、競り合う腕は小刻みに揺れている。


…きっと、相当な力が掛かっているに違いない。


『…さ、そろそろ終わらせて貰うぜ?』


不意に原田さんの棒が回転した。



…藤堂さんの時と、同じ技。



一瞬、永倉さんの木刀が巻き込まれかけた--





--…其の時。




『…お前も若いな、左之。』



永倉さんの笑みが、不意に濃くなる。


同時に、原田さんの棒が宙を舞った。




『…オイオイ、嘘だろ?』


カラン…と虚しい音を立て、長い棒が地面に落ちる。


『力とスピードなら、お前に負けねェよ。…棒より早く木刀を流れに乗せりゃ、弾き飛ばすくらいチョロイぜ。』

永倉さんが、地面に落ちた棒を片手で拾いながら自慢げに言葉を紡いだ。


『スゲーな新八つぁん…いつもそうしてりゃー男前なのに。』

藤堂さんも、感心した様子で永倉さんを見つめる。

『…女の子がいると、通常の二倍の力が発揮出来るっつー噂はホントみたいだな。』

拾われた棒を受け取りながら、口許に笑みを浮かべる原田さん。

言葉とは裏腹に、永倉さんの力を認めているような…そんな雰囲気が、彼からは感じられた。