『何か…色々あったね。』
雛が心底疲れた様子で畳の上に座り込む。
『そうだね。…沖田さん、大丈夫かな。』
私は、自分の胸に渦巻く不安を雛に告げた。
『土方さんや近藤さんは平気な顔してたけど…もしまたあんな多人数に囲まれたら…。』
雛も顔を曇らせる。
『…大丈夫、だよね。』
私は、私自身に言い聞かせる様にそう呟いた。
沖田さんの自信に満ち溢れた態度。土方さんに命じられた時も、それが当たり前かの様に頷いて部屋を出て行った。
自分の腕に自信があるからなのか…それとも−…
命を失う事を、恐れていないのか…−。
どっちにしろ、沖田さんが自ら戦いの場に突っ込んで行く事には変わり無い。
…一体、何が彼をそこまで突き動かすのだろう。
…いや、彼だけじゃない。
新撰組隊士は皆、命を懸けて何を守ろうと言うのだろう。
私と雛は暫らくの間、無言で畳みに座り込んで居た。
----どれ位の時間が経っただろう。
土方さんの小姓でもある市村君が荷物を部屋に運んで来てくれた。
無造作に押し込まれた靴も、其の侭だった。
『…何か、元の世界が懐かしいな。』
私がそう呟いた、
−−−−其の時。
『…戻りました。』
山崎さんの声が、玄関の方向から響いた。
『…帰って来た!』
私と雛は立ち上がり、障子を開けて玄関へと急いだ。

