さて、といつも通り意味もなく周りを見渡す。
そこで手の中にあったはずの指輪がないことに気が付いた。

先日旅行から帰って来た祖父からのお土産で、それなりに気に入ったので蔵に来てからもしばらく眺めていたのだがどうやら忘我のさなかに緩んだ手の中から転がり落ちたようだ。


しかたなく、携帯のカメラを起動させてその明かりで床を照らすが、立ったままで数分、見つからないのでやむを得ず埃の溜まる床に再度身体を寄せる事となった。

床上5センチ程の位置から辺りを見ていると左側の髪が床を擦る感覚。
また埃がつくなぁ、と呑気に考えながら指輪を探す。


やがて祖父が世界中から集めた様々なコレクションの隙間に、ようやく指輪を見つけた。

すぐ近くにあるのは、砂漠の市場にでもありそうなアンティークな雰囲気のある小さなランプ。
興味を惹かれた瓜は指輪と一緒にそれを取り出すとその場に座り込んだ。


まるで劇に使われる小道具のようなそれをしばし眺め回す。


「魔法のランプ……みたいだ…」

蓋を引っ張ってみるが開かない。
実用品じゃないのかと少し落胆し、だから買ったは良いが使い道がなくて蔵に置いたのかもしれないと納得した。