いや、でも今優先するべきは〝大魔女〟のことではなく、彼女、綾小路さんのことだ。



綾小路さんと離れなければ中村さんは魔法が使えないと〝大魔女〟は言った。



けど綾小路さんに魔力は全く感じなかった。



そもそも中村さんにだって魔力を感じなかったんだ。





…待てよ。



まさかそれこそが綾小路さんの力…なのか!?








「最長老、一体〝大魔女〟は自分の御子に何を課せたのですか…!?」



「課せた…か。そうじゃの。他人にはそう見えるじゃろうなぁ。理由は至極簡単なんじゃがの。〝創造壊利力〟を持つ者が〝リナ〟になったからじゃ」



「使い手が中村さんになったから…?」



「そう。かつてその力を有していた桜月 苺は自身の力〝創造壊利力〟を使いこなしていた。
じゃが〝創造壊利力〟を持つ者が〝リナ〟となった今、その力はとても危うい。制御出来ない力は暴走するだけじゃからの。
その力を抑える術があるとすれば、それは、〝大魔女〟の血を引く〝小梅〟だけじゃ」



「〝大魔女〟の血を引く者なら望月家がいるじゃないですか!?」



「そうじゃが、直系ではないじゃろ?」



「け、けれど!任務を受けたのは〝大魔女〟じゃないですか!なら〝大魔女〟自身が〝創造壊利力〟を制御するべきなのでは!?抵抗できる力があるんだったら制御だって可能だったはずでしょう!?」



「それはムリじゃ。〝大魔女〟は約60年もの間、魔力を使い続けていたんじゃからな。その後の10年、〝創造壊利力〟を制御できる力なぞ今は残ってはいないじゃろうて」






60年、魔力を使い続けてきた…!?



その後の10年って…?




いや、それより、今の話が全て本当なのだとしたら。



綾小路さんは中村さんに会う為に、〝創造壊利力〟を制御する為だけに生まれてきたってことなのか…!?



本人たちは何も知らないまま、唯一無二の親友同士になって。



離れ難くなるくらい一緒にいて。




けれどそれは全て、〝大魔女〟が、このヴァイズ国が仕組んだことだったのか―!?



そんなの…!



そんなのあんまりじゃないか!!







「そうじゃ。全てを犠牲にしてきたんじゃ。〝大魔女〟も。…我々もな」






その呟きと共に、この話は終わりだと最長老の目が語っていた。