「そうやって、あんたは泣き叫ぶだけなのね」
『娘!!早よ逃げるん…っ!!ぐぁっ!!』
振り向いた時には、歴史館の中に横たわっている前永さんが。
そしてその横に、キレイな女の人。
「私、犬が動物の中で一番キライなのよね」
その手には、鞭が握られてて。
気を失ってる前永さんにむけて振りかざしていた。
「や、止めてよ!!前永さんもう気失ってるじゃない!!」
「だから?死んではないでしょ?」
「な…っ!?」
「この犬が大事ならあんたが守ってみせなさいよ」
そうだ。
あたしが守らなきゃっ!!
バチィ!!
前永さんに覆い被さるように飛びついた。
背中に鞭で叩かれた痛みが走る。
「…っ!!ぃ…痛…っ!…うぅ…っ!」
「…あんた、そうやって泣けば止めてくれるだなんて思ってるわけ?」
「…思ってるわけ…ないよ…っ」
「庇うことが守ってるって思うわけ?」
「思ってるわけないよっ!だけど、守る力も戦う力も、あたしにはないのに…っ!!
だから…こうするしかないじゃないっ!!」
全身を鞭で打たれながらあたしは叫んだ。
「ムカつくわあんたが…!!あんたがいつまでもそんなだから!!キリト様は――!!」
バシィ!!
ビュッ!!
バチッ!!
痛い。
痛い…!
どうしてあたしたちがこんな風に戦わなきゃいけないの?
どうしてみんなが傷つかなきゃならないの?
どうして…?
― ド ウ シ テ ―
そこであたしの意識は途切れた。