「その絵本〝へいわのうた〟に出てくる女の子、それが桜月 苺さんなんですよ」





この辺の病院、幼稚園、学校には必ず置いてある絵本。



それが〝へいわのうた〟。




実話を基にした物語で戦時中のお話。





昔起きた世界大戦。



街も木々も焼かれて、たくさんの人々が亡くなっていった。




けれどその少女は。



強く、希望を捨てていなかった。




ある日この街も空襲にあった。



少女は空襲に脅えるどころか立ち向かっていった。



たくさんの爆弾が空から落ちて街が焼けるその中で少女は歌い続けた。




「希望はある」と。



「きっとこんな戦争は終わり、平和が訪れる」と。




その歌声は、とても美しく澄んでいて…今でも人々の心に響き渡っている。




戦争が終わった今でもなお――…。







「というお話です」



「小梅、語り上手だな」



「ううー!!いい話だなっ!感動したぜー!!さすが綾小路さんっ!!」



「けどよ…。その歌った少女は結局どうなったんだ?」






そこをつっこまれると私も困るんですが…。



絵本だと少女がどうなったかーまでは描かれてないんですよね。







「たぶん焼け死んじゃったんじゃない?何も描かれてないってことはさ」



「リナ…そんな夢のないことを…一応これ実話なんですから」



「だって空襲の中歌ったんでしょ?ケガじゃすまなくない?」



「それにしても、小さい頃の桜月 苺さんと一緒に写ってる人誰なんだろーな…」



「楓くん、何か気になることでもあるんですか?」



「いや、だって親だったら全然似てないなーと思ってさ」








…確かに、親子なら顔のパーツとか似てるところある。



けれど、この苺さんと一緒に写っている男性は、苺さんに全然似てない。