「催眠療法って具体的にどーやるんだよ?」
「それはルゥが見てりゃわかると」
見てればわかるって、さっきから向かい合って座ってるだけじゃん。
リナは目をつぶってるけど。
『よし。いいか、リナ。お前は今、9年前の公園にいる。公園を思い出せよー』
相手に暗示をかけるってわけか。
単純だな。
いや、単純すぎだろ。
そんなん効くのか?
「公園…」
『よぉしっ。そうだ。いい感じだぞーっ!!お前は今公園にいるっ!
…そんじゃあさっそく聞くが…何が見える?』
「………雨…。…雨が…降ってる」
『雨か!!他には?』
「…雨……が……」
『んじゃあ、もうちょいと時間を遡ってみよーか。うん、一時間くらい』
…おいおい、こんなんで大丈夫かよ?
『さっ、何が見える?』
「……うーん。雨が降ってて……。……あ、目の前に…」
『目の前に!?』
「ソラがいる」
『…リナ。もっかい聞くぞ。何が見える?』
「ソラがいるよ。…あ、そういえば今日の夕飯何がいいか聞くの忘れちゃったなー。何にしよっかなー?」
…やれやれ、ヤッパリな。
『ちょ…。目開けていいぞリナ』
「う~ん…っ!なんか妙に疲れた~っ!」
背伸びをするリナを後目にルゥは完璧不機嫌モード。
俺から言わせて見りゃなんで催眠療法なんつー曖昧な療法に頼ろうとしたのかが不思議だけどな。
『リナ…一つ言っていいか?』
「うん?」
『お前…少しはマジメにやれっ!!』
「はぁ!?やってるわよ!!あたしはただ見えたもの言っただけじゃん!!」
『お前の脳内はソラしかいねーのか!?つかそんな想っててなんで付き合ってねーんだよ!!』
「ウルサいなっ!!ネコのあんたには関係ないじゃんっ!!」
催眠療法はどこへやら。
当初の目的を忘れケンカをおっぱじめた二人。
付き合ってられっか。
俺はすぐさま教室を後にした。